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小説『エイム・タップ・シンデレラ』作者・朝海 ゆうき先生はなぜeスポーツと5vs5爆破FPSに詳しいのかご本人に聞いてみた

小説『エイム・タップ・シンデレラ』を読んだ感想が「作者があまりにもeスポーツと5vs5爆破FPSに詳しすぎる」というもので、その理由を探るべく作者・朝海 ゆうき先生に質問をさせていただきました。

※正式なタイトルは『エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す』

小説『エイム・タップ・シンデレラ』について

『エイム・タップ・シンデレラ』は、eスポーツと5vs5爆破FPSをテーマとする本格派なeスポーツ小説です。

昨今のeスポーツシーンが見事にストーリーに落とし込まれている他、ちりばめられている多数のネタもeスポーツやFPSファンが気づけばうなるようなものばかりです。

小説を読み進めながら思ったのが「作者があまりにもeスポーツと5vs5爆破FPSに詳しすぎる」ということだったのですが、その理由を知るにはご本人に聞くしかない、ということでお願いしてみたところ、快くOKをいただくことができました。

「FPS」「eスポーツ」との出会い

―― 作品を読みながら思ったのが「あまりにも5vs5爆破FPSとeスポーツに詳しすぎる」ということでした。かなりお好きなのかなと感じたのですが、朝海先生は「5vs5爆破FPS」をプレーされているのでしょうか?もしくは過去にプレーされていましたか?

朝海ゆうき先生

初めて5vs5爆破FPSをプレーしたのはもう20年以上前で、『Counter-Strike』(CS)から入りました。『Steam』登場以前からプレーしており、CS1.6ではチーム(当時は”クラン”)にも入って競技シーンで活動していました。

もちろん今ほど人はいなかったですが、大会には階級ごとのリーグが存在するなど、一定の盛り上がりはあったように思います。文字通り寝食を忘れて熱中していたので、当時の記憶はほぼすべてCS1.6で占められています。

ここ10年ぐらいはプレーから離れていましたが、ふとしたきっかけで『VALORANT』のことを知り、そこから再びプレーするようになりました。

―― eスポーツで「Counter-Strikeをやっていました」は信頼のバロメーターなので、作品世界が詳細なのも納得しました。CS1.6の階級制大会だと「Killing In Action」「Survival of the fittest」あたりですね。「eスポーツ」についてはどうでしょうか?初めて「eスポーツ」を知った時のことを覚えていますか?ご本人にとっての「eスポーツ元年」を聞くのが好きで、みなさんによく質問しています。

朝海ゆうき先生
はじめて「eスポーツ」という言葉を知ったのは自分がプレイヤーだった時だと思いますが、「スポーツ」という語感にどこか後ろめたさを感じたことを覚えています。

一方で、今自分が熱中しているものは間違いなくこれまで経験した何よりも面白く、こんな面白いものがどうしてもっと世の中に広まらないのか、という悔しさのような気持ちもありました。

そんなアンビバレントな気持ちだったと思いますが、多分、あの時代にeスポーツに熱中していた人の中には自分と同じ気持ちの人がそれなりにいたのではないかと思います。

―― 回答に関連して、作中に「白い目で見られながらもeスポーツを続けて来た先人達がいてこそいまのシーンがある」というニュアンスの表現があってハイライト登録していたのを思い出しました。昨今の5vs5爆破FPSタイトルを舞台とする「eスポーツシーン」の描写が非常に詳細で、かなりご覧になっているのだろうと感じられました。やはり見ているのは『VALORANT』競技シーンでしょうか?

朝海ゆうき先生
今一番競技シーンを見ているのは『VALORANT』です。自身がプレイしているタイトルであるということに加えて、キャスターの皆さんによる大会配信の質の高さや、プロ選手・ストリーマーの方々の日常的な配信の面白さから、文字通り毎日見ています。

他タイトルだと、『League of Legends』はプレイしないものの大会や配信を見て楽しんでいます。

「eスポーツ」作品を手がけた理由

―― 「eスポーツ」や「5vs5爆破FPS」はかなり昔から親しまれていることがわかりました。この2つをテーマとする作品を書こうと思ったのはどのようなきっかけなのでしょうか?

朝海ゆうき先生
元々ライトノベルを含めて小説を読むのが好きで、数年前から執筆と新人賞への投稿を始めました。最初はeスポーツをテーマにするつもりはなかったのですが、2022年にZETA DIVISIONさんがVCT Masters Reykjavikで3位入賞した時の熱狂をリアルタイムで経験したことがきっかけとなり、eスポーツをテーマにすることを考えました。

[関連記事]
ZETA DIVISIONが『VALORANT』世界大会VCTで3位の快挙を達成、日本FPS界の20年の挑戦がついに実を結ぶ。弱小国が生んだ英雄たちの軌跡
https://www.famitsu.com/news/202204/26259596.html

自分は今のeスポーツを取りまく状況は非常にユニークだと感じています。そのユニークさをうまく伝えられれば多くの人に興味を持って頂けるテーマになるのではと思ったと同時に、そこで活動する選手やスタッフ、ファンが抱く感情はどんな世界にも通じるだけの普遍性があると思いました。それで試しに自分で書き始めたら、いつの間にか本作が出来上がっておりました。

詳細な描写の手助けになったのはプロ選手の配信

―― 作品内に登場する各シーンについて、頭に映像が浮かんでくるほど見事に表現されていると思いました。大型会場のオフライン大会は実際観戦に足を運ばれたことがあるのかなと感じましたが、いかがでしょうか?

朝海ゆうき先生
実は、チケットが取れなかったり日程が合わなかったりで、『VALORANT』の大型オフライン会場に足を運んだことはありません。ただ、大昔の、今と比べたら本当に少人数しか参加していなかった頃にオフラインイベントに参加したことがあります。

それでも昔と今とでは大きく異なる部分もあるので、チーム・選手・ファンがアップロードされた動画や写真を見つつ、現地の空気感を想像して書きました。そろそろチケットを手に入れて参加したいです…!

―― そうに違いないと思っていたので、まさかの回答に驚きました…!選手やチーム関係者がチーム再編時に直面する厳しさや葛藤を感じるパートも印象的でした。選手やチームの方に取材をされたのでしょうか?

朝海ゆうき先生
直接の取材はしておりませんが、自分は日常的にプロ選手の配信を見ており、配信内での発言やコメント欄とのやり取りなどは参考にしています。

また、eスポーツは昔からチーム再編やメンバーの脱退加入が激しく、自分が所属していたチームも例外ではありませんでした。中には自分にとって辛い出来事もあり、そのような人間の葛藤はきっと昔も今も同じだろうと思って書きました。

作者も編集者も『VALORANT』プレイヤー

―― 出版社のご担当の方もeスポーツに理解や関心があったのでしょうか?eスポーツの小説を出版することを決めて、会社にも通してくれたというのはすごいことだと思いました。

朝海ゆうき先生
本作は電撃文庫さんの新人賞の最終選考手前まで行った作品が原案となっており、それを担当編集者さんに拾っていただいたものとなります。

拾い上げていただいたきっかけの一つが、担当編集者さんご自身が『VALORANT』プレイヤーでもあるということでした。

また、ライトノベルというジャンル自体が幅広い作品を受け入れる、チャレンジしやすい土俵というのもあると思います。とはいえ、本作のようなeスポーツを真正面から描く作品を出版するのはチャレンジだと自分自身も思いますし、担当編集者さんには感謝しかありません!


※5vs5爆破FPSを知らない人向けの解説が用意されてたりと、読み手にやさしい作りになっている

朝海ゆうき先生が応援しているチームや選手

―― 編集者さんも『VALORANT』プレイヤーというのは心強いですね。身近なところにFPSプレイヤーがいるようになったのも感慨深いです。みなさんによく聞く定番質問なのですが、応援しているチームや選手がいましたら、教えていただけないでしょうか。

朝海ゆうき先生

主にVALORANTシーンからあげさせていただきます。

【チーム】
『ZETA DIVISION』さんです。
日本におけるeスポーツの立ち位置を変えてくれたチームだと思います。

【選手】
『ZETA DIVISION』の Lazさんです(引退ではなく一旦ピリオドということなので、本項目に…)。実績と人格は言わずもがなですが、自分が10年ぶりにFPSを再開したきっかけでもあります。

『FENNEL』のGONさんの配信も楽しく見させて頂いております。

【コーチ】
元『SCARZ』コーチのNoppoさんです。活躍の場を求めて単身スウェーデンに留学する姿は、当時の自分にとって衝撃と、少しの羨望がありました。

【アナリスト】
『ZETA DIVISION』のgya9さんです。実績はもちろんですが、表に出にくいアナリストの仕事内容を、わかりやすく発信してくださっている姿がすごいと思います。

【コミュニティ】
Yossyさんです。純粋にNegitakuユーザーとして感謝しているというのと、20年以上継続的に運営されているのは畏敬の念すら覚えます。

また、uNleashedさんも、プロ選手としての活動以降も日本のeスポーツ黎明期からコミュニティ活動を支え続けられており、すごいなと思っています。

ここに挙げた方々・チーム以外も、eスポーツシーンに携わっているチーム・選手は全員応援しています。

朝海ゆうき先生の使用ゲーミングデバイス

―― 人選が昔から最新シーンまでを追っている方ならではの幅広さですね!朝海先生がこのサイトを昔から見ていただいていたと知って大変驚きました。使っているゲーミングデバイスを聞くのも好きなのですが、よろしければ教えていただけないでしょうか?

【マウス】
Logicool G PRO X SUPERLIGHT 2 ブラック

【マウスパッド】
SteelSeries QCK heavy

【キーボード】
Razer Huntsman V3 Pro Mini

【ヘッドセット】
Sennheiser GSP600

【モニター】
ZOWIE XL2546K

ここまで読んで『エイム・タップ・シンデレラ』が気になった方へ

―― ありがとうございます。小説家の方に使っているゲーミングデバイスをお聞きするのはレアなので、非常にうれしいです。朝海先生が、本作でおすすめする点を是非おしえてください。

朝海ゆうき先生
Negitaku読者だったら楽しめる小ネタを作品内に散りばめてあります。たとえば、序章で主人公の父親が1vs1 FPSの世界大会に出ます。その大会優勝賞品がポルシェで、わかる人には元ネタがわかると思います。

あと、場面場面で挟まる実況と解説者のやり取りではOooDaさん的な小ネタも入れようと思っていたのですが、どうしても納得のいくシーンが書けず断念しました。いつか、あの空気感を文字だけで表現できるようになりたいです。

[関連記事]
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―― あらすじに記載のあるチーム名「エニグマ・ディヴィジョン」などで「お!?」と思いましたし、作中でも気になるネタが本当にたくさんありました。最後にこんな人に読んで欲しいなど、コメントをお願いいたします。

朝海ゆうき先生
「今eスポーツをテーマとした物語を作るとしたら、どんなものになるだろう?」と考えて本作を書きました。Negitakuをご覧になられている方でしたら、必ず楽しんでもらえる作品になっていると思います。

かつてeスポーツに熱中した人も、今まさに熱中している人も、現実のeスポーツの熱狂に負けないジェットコースターのような物語をお楽しみください!

「作者があまりにもeスポーツと5vs5爆破FPSに詳しすぎる」理由

その理由は、朝海ゆうき先生自身が現役のFPSプレイヤーであり、長年に渡って5vs5爆破FPSやeスポーツシーンを追い続けているからでした。そして、真剣にプレーするプロ選手・チームからの存在も作品に大きな影響を与えていることがわかりました。

今回、突然のお願いにもかかわらず快く回答していただいた朝海ゆうき先生、ありがとうございました!

小説『エイム・タップ・シンデレラ』について

ストーリー

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この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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