ESLがCounter-Strike世界トップクラスのコーチによる座談会を開催し、動画「Counter-Strike’s most difficult role – Coach Roundtable(Counter-Strikeで最も難しいロール – コーチ座談会)」として公開しています。
動画「Counter-Strike’s most difficult role – Coach Roundtable」について
座談会は、現在開催されている「Intel Extreme Masters Cologne 2024」の関連企画として実施されました。Counter-Strike競技シーンを代表する3人のコーチが、その役割についてそれぞれの考えを披露しています。
出演
- Dennis “sycrone” Nielsen (28歳、MOUZ史上初となる世界ランク1位を達成)
- Andrij “B1ad3” Ghorodensjkyj (37歳、Natus Vincere、CS:GOとCS2でメジャー制覇)
- Filip “NEO” Kubski (37歳、FaZe Clan、選手時代にメジャーを含む優勝多数、コーチ1年目で複数の優勝に貢献)
- 司会:Jason “moses” O’Toole (キャスター)
動画を見ながら気になる発言についてメモしていたものを下記に掲載します。
チーム構築やロールコンバートに対する考え方、選手との関わり方などかなり興味深い発言を見ることが出来ます。
発言メモ
sycrone
- インゲームリーダーを担当し、トップ30以内の様々なチームでプレーしてフルタイムの給与を得ていた。それよりもランクが落ちるチームだと給与を得てプレーするのは難しかった。
- そこでCounter-Strikeを教える講師の仕事を兼業でするようになった (デンマークの学校では、Counter-Strikeを学べる選択授業があるそう。教えていたのは中学生相当の学生たち)
- 講師としてCounter-Strikeのプレーだけではなく、時間通りに集まることの大切さなど様々な事を教えた。
- MOUZからアカデミーチームコーチのオファーを受け、プロジェクトに参加した。半年後にはメインチームのコーチに昇格した
- (チームに欲しい価値ある選手について) ゲームプレー以外の点も重要視している。MOUZは、まず5人全員がプロジェクトに同意しているという前提があり、ゲームプレー以外にもチームに何らかの要素をもたらす必要がある。チームにエネルギーを与える、コミュニケーションする、チーム内の話をまとめる社交性がある、など個人それぞれが持つ能力はとても大切だと思う。
- 最高のチームを作るにはお互いの信頼が重要だ。それぞれが信頼される行動をする必要がある。その考え方の元でチームを作り上げている。B1ad3「(感心した様子で)メモしました」
- (完全に新たなメンバーでロスターを作る場合、どのように取り組むか) アカデミーチームMOUZ NXTの場合、JDCが注目選手だった。共にプレーしたことがあるのはszejnとsiuhyだけだったと思う。自分の場合は、早い段階で選手たちから信頼を得たいと思っている。
- siuhyをIGLに指名したのが最初にやったことかもしれない。siuhyは前のチームでIGLをしていたわけではないが抜擢した。プレイメーカーでコールやコーディネートの知識があり、アイルランドに住んでいたことがあり流暢な英語をしゃべることができるのも重要な点だった
- その後、チームの強みを理解し、ロールが上手く機能している確認するのも重要。そこからチームの基盤を作り上げていく。共通の価値観・目標・言語を持つようにしていく。
- 国際ロスターはチームに異なる文化、アイデア、視点をもたらし、多様なゲーム展開につながると思っている。B1ad3「いまはインターナショナルチームメタということかもしれない」(この前に話題となっていた現在のメタに関する質問と関連づけた発言)
- (特定ロールの選手が必要な場合、新規獲得するかコンバートさせるか) あまりにも異なる役割を担当させるのは危険だと思う。例えばアンカーを攻撃的なロールに変更するなどだ。試してそれに気づくというのも良いと思うが…。
B1ad3
- 現役当時はIGLを担当し、継続的に成長出来るように教えることをやっていた。当時チームにコーチという存在はいなかったので、自分がプレイイングコーチのような感じだった
- 2018年にFlipSid3 Tacticsのコーチとなり、Gambit Esportsで半年間コーチをして悪夢のようなメジャーを経験した後(※ベスト22)、Natus Vincereに移籍した
- 選手にはスタンダードな知識を与える必要がある。選手はそれぞれもっている知識が異なるため、移籍してきた選手がどのような知識を持っているかわからない。これは現在もそうで、今後5年くらいは変わらないだろうと思う。※基礎知識を教えるためのシステムや教育が必要という意見
- (スター選手をコーチすることについて) 色々な要素があるが、難しいと思う。システムがあったとしたら、それをスター選手に合わせて適応させる必要がある
- 選手が大会で1つや2つ悪いプレーしたかどうかは気にしていない。1ヶ月程度でその選手のことはわからない。6ヶ月ほど見て課題や可能性がわかってくる。完璧な人間はいないし、毎回同じプレーができる選手は存在しない。反省し、知識を得て、自分の気持ちを理解する能力が必要だ。
- 以前6人ロスターで運用していた時期があり、良い結果を得た。本当は7人にしたかった。同じ目標を持って活動しているので、チーム環境としては健全だった。
- flamieとb1tをマップごとに交代させて起用していた。当初、b1tはInfernoのみ担当していたが次第にプレーするマップが増え、現在ではスタメンになっている
- この場合、ベンチにいる選手は特定マップがピックされればプレー出来るため、起用されるかどうかという不安から解放されるし、特定マップに専念して準備することができる
- この方法はリッチなチームのやり方であり、内部では否定的な意見もあった
- (特定ロールの選手が必要な場合、新規獲得するかコンバートさせるか) 状況にも異なるが、若いプレイヤーならいつでもロール変更出来ると思う。(司会に経験豊富な選手の方が変更しやすいのでは?と言われて) 若いプレイヤーは知識が無いから、白紙のような状態だ。sycroneがsiuhyをIGLに起用した話をしたのが良い例だ。成長してしまった選手が途中からロールを変えるのは非常に難しいと思う。
- 選手の食事や睡眠は重要で、例えば3マップ目での脳の働きなどに影響してくる。実際のところ、選手の食事や睡眠を管理するのは難しい。
- eスポーツキャンプでは、パーフォーマンスコーチがPCを使えるのは午前1時まで、午前2時には寝ろといってPCの電源を落としていた(笑) お母さんに「いつまでゲームをやっているの!」と言ってパソコンを消されるみたいな感じだ。moses「昔はそうだった。PCから電源を抜いてキーボードを隠すみたいな。店に行けば2ドルくらいで買えるのを知らなかったみたいだけど。」
NEO
- CS:GOでインゲームリーダーを担当するようになった
- 誰もが知るFaZe Clanからオファーがあり、このようなチャンスはもうないかもしれないと思いコーチとなった
- (スター選手をコーチすることについて) それぞれプレーについて独自で学んだ方法があり、異なることをさせるのは難しい場合もある。良い結果につながる場合もあるし、悪い方向に行く場合もある。スター選手にプレーを強制することで試合が台無しになるようなことにはしたくない。バランスが大切。
- (若くしてスター選手になることについて) 自分が現役の頃はSNSもYouTubeもなかったし、お金もなかった(笑)。全てが違っていた。いまは上手く対応しなくてはならないから、大変だと思う。
- (チームに欲しい価値ある選手について) sycroneの回答に同意し、チームは個人それぞれが持つ能力がうまく組み合わさった時に上手く機能する。
- (国際ロスターが当たり前の現在、どのように共通認識をもたせるかという会話の中で) みんな異なる文化を背景に持っている。ただ、Counter-Strikeという言語は共通なんだ。 moses「Counter-Strikeは普遍的な文化で、美しいですね」
- (コーチは休まる時があるか?) コーチは選手としてプレーしていた時よりもはるかにストレスが多いと思う。選手の時はプレーに夢中だったけど、コーチは選手の後ろに立ってゲームに参加はしているものの、全く異なるストレスがある
- (コーチは戦術や戦略だけではなく、選手の管理やゲーム外での仕事も重要になる。予想していた?)わかってはいた。自分は選手として20年以上プレーしてきて、いまはコーチ1年生だ。この座談会で経験豊富なsycroneとB1ad3の話を聞いたりと色々なことを学んでいる。
- (現在のメタについて聞かれ) メタは変化し続けている。これはCounter-Strikeの良いところで、常に新しいものがある。
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