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eスポーツ施設「ASH WINDER Esports ARENA」代表インタビュー、東京・高田馬場駅前 徒歩30秒の施設はどのように誕生したのか

株式会社ASH WINDERが、東京・高田馬場駅前30秒の位置に最先端eスポーツ施設「ASH WINDER Esports ARENA高田馬場店」をオープンしました。

どのような経緯で誕生した施設なのか、最高経営責任者のGraham Zeng氏(以下、グラハムで表記)に話を聞かせていただきました。


Graham Zeng氏

※文中の「Yossy」はインタビュアー・当サイト運営者

「ASH WINDER」はどのようなeスポーツ企業?

―― 2020年に大阪の施設を訪問させていただいて以来なのでお会いするのは3年ぶりになります。まず「ASH WINDER」とはどのような会社かを教えていただきたいです。

グラハム
「ASH WINDER」は中国・韓国における大手のeスポーツ企業「Banana Culture」から派生した会社として、大学生の時に立ちあげました。

「Banana Culture」は、eスポーツが進んでいる中国・韓国で大会イベント制作・施設運営・演者のマネジメントなどの事業を行なっています。

「ASH WINDER」は、日本における「Banana Culture」のような存在を目指していて、eスポーツコンテンツ制作、eスポーツ施設運営、eスポーツタレントMCN事業を3本の柱として展開しています。

最初に会社として立ちあげたのは4年前で、大阪のアメリカ村に「ASH WINDER Esports ARENA心斎橋店」というeスポーツ施設を作りました。

―― 「ASH WINDER」という会社を作ろうと思ったのはどのようなきっかけですか?

グラハム
そのきっかけについてですが、まず「Banana Culture」グループとしては全アジアのeスポーツを統合するような事業展開を目指していました。

中国、韓国に続く進出先を検討している中で、残念ながら日本のeスポーツはグループ内であまり高い評価を得られず、マレーシアやベトナムといった東南アジアの方でまず展開していくことになりました。

その結果、ベトナムは『League of Legends』のレベルがどんどん上がり、ベトナムから世界トップクラスの中国リーグ『LPL』に選手が移籍するような流れができたのですが、その背景にはベトナムにおける「Banana Culture」グループの取り組みがありました。

「Banana Culture」グループ内における日本の評価は、進出には時期尚早というものでしたが、僕と「ASH WINDER」の共同パートナーであるSunさんはそう思っていませんでした。

日本に留学して長期間住んでいましたし、何より日本を愛しています。日本でeスポーツ事業が成り立つかわからないというのはあくまで海外から見た評価で、僕とSunさんは日本のeスポーツがこれから絶対に発展して、ビジネスとして成功できるマーケットになると信じていました。

そこで、当時は大学生でしたが自分たちで資金を出して、日本でeスポーツ事業ができるということを証明しようと思い、「ASH WINDER」を設立しました。

2019年、大阪にeスポーツ施設をオープン

―― 当時だと大阪でeスポーツ施設は珍しかったと思いますが、反響はどうでしたか?

グラハム
思った以上にたくさんの人に来ていただきました。深夜営業でも80%くらいの席が埋まり、驚きました。

山口直暉(ストアマネージャー):
日々、ほぼ満席になるくらいお客様にきていただきました。
冬場でも冷房を入れるくらいだったことが、自分としては印象的でした。

Yossy:
お客さんがたくさんいて熱気がすごくて冷房を入れたという感じですか?

山口:
お客さんの人数もそうですが、高性能なゲーミングPCが大量に使用されるので、PCの排熱による熱というのもすごかったためです。

Yossy:
なるほど!来客が多いとその分PCが使われるから、熱がすごいんですね。

山口:
eスポーツ施設というと東京のイメージがあったので、大阪のeスポーツ施設にどのくらい需要があるだろうと思っていましたが、試しに遊びに来たらのめり込むようになった方や、学校帰りの学生さんが5人組でRainbow Six Siegeをやりにきたり、思った以上の反響がありました。日によっては、横並びの席が準備できないくらい席が埋まっていることもありました。

―― 大阪のお店には、中国の有名チーム「Invictus Gaming」のユニフォームなどの展示がありましたよね。「ASH WINDER」と関係性があったと記憶していますがどうでしたでしょうか。

グラハム
パートナーのSunさんが、「Invictus Gaming」のOverwatchチーム「iG.Fire」と「IG.Ice」の統括監督を務めていた関係で交流があります。「Invictus Gaming」は『League of Legends』や『Dota 2』で世界一になっている中国の大手チームで、当時の『Overwatch』部門もかなり強かったです。

ちなみに、Sunさんはゴリゴリのゲーマーでビジネスには興味なし、自分はイギリスに留学してビジネスの勉強をしているeスポーツ好きという組み合わせになっています(笑)

「ASH WINDER」の強みは海外パートナーとの連携

―― 今回はeスポーツ施設の立ち上げでしたが、「ASH WINDER」が最終的に目指すのはどんなところでしょうか?

グラハム
いまは日本をベースとしていますが、「Banana Culture」グループのノウハウと自分たちの経験を組み合わせて、「ASH WINDER」として東南アジアに進出することも目指しています。将来的には、日本を中心として「Banana Culture」がやろうとしていた、アジア全体を対象とする取り組みを自分たちが実現したいですね。中国では「VSPO」が色々やっているのですが、「ASH WINDER」ブランドでeスポーツシリーズを東南アジアで実現したいと思っています。

―― 「Banana Culture」と「VSPO」について、知らない人向けに確認させてください。どちらも有名なeスポーツの制作会社という認識ですが正しいでしょうか。

グラハム
「Banana Culture」は、韓国のLeague of Legendsプロリーグ「LCK」やVALORANTのインターナショナルリーグ「VCT Pacific」の運営を担当しています。PUBGの公式国際大会の運営実績などもあります。アジアで大きな大会を運営できるノウハウと実績があるのは「Banana Culture」くらいといっても良いくらいの企業です。

「Banana Culture」は韓国と中国を中心に展開を行なっていたのですが、中国部門がテンセント傘下の「VSPO」に買収されています。これまで「Banana Culture」が中国で展開していた部分については、いまは「VSPO」が担当しているような状態です。

僕たちは「Banana Culture」と「VSPO」のどちらとも10年前からのつながりがありまして、3ヶ月くらい前に日本・韓国・マレーシアが連携して『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』のアジア大会をやったのですが、そこでも「Banana Culture」と「VSPO」と協力して実施していました。

日本のeスポーツが世界に認められ、東京進出を決意

―― 今回、「ASH WINDER Esports ARENA」が東京進出になりました。その狙いについて教えていただけますでしょうか

グラハム
日本のeスポーツは、間違いなく成長期に入ったと思っています。
『VALORANT Masters Tokyo』が日本で開催された際に、「Banana Culture」「VSPO」「Riot Games」などの知り合いが結構な人数、日本にやってきました。毎日彼らを会場に案内しているような状態だったのですが、評価は一様に「日本のeスポーツはこんなにすごくなったんだね」というものでした。

Yossy:
海外のeスポーツ関係者からもすごいと思っていただけたのはうれしいですね。

グラハム
すごくうれしいですよね。グローバルな視点から見ると日本のeスポーツ元年は去年だと思います。

そのポイントは2つあって、1つは日本のチームが自力で世界大会に出場して結果を残したということ、もう1つは1万人以上を集客できるeスポーツのオフラインイベントが開催できるようになったという点です。

昔は日本で300人とか500人集まったらとんでもないことでしたが、『VALORANT』や『RAGE』といったイベントで1万人近くが観客として集まってeスポーツ観戦が出来るような状況ができあがった日本のeスポーツは強いと思います。

海外のeスポーツ関係者との会話や反応から、「ASH WINDER」としてもより本格的に事業を展開出来る段階に来たと判断しました。この動きを進めるにあたり、東京に活動拠点を設ける必要があるというのが東京進出の理由です。

―― 今回、大阪でお会いしたスタッフの方もお見かけしましたが、皆さんも大阪から東京に引っ越してきたのでしょうか?

グラハム
会社の方針で東京に進出したい、全員ぜひついてきてほしいという話を全従業員のみなさんにしました。引っ越し代と敷金を出しますということも合わせてお伝えして(笑)

みんなもeスポーツで夢を叶えたいという想いで賛同してくれて、本当にありがたい話だと思いました。

eスポーツにちょっと詳しい方からすると、僕らは『A.W EXTREME MASTERS Asia Invitational』というVALORANT公認大会を開催してから何もやっていない謎の会社だと思います(笑) そんな僕らが東京に行って何をするのかと色々と考えました。東京にはeスポーツの総合的な施設というのがまだないと感じていました。1万人規模のeスポーツイベントを開催出来る規模になってきた。ただ、2~300人規模のイベントを手軽に開催できる場所がない。まず、そういった場所を作る事を東京進出の第一歩にしました。

eスポーツを楽しめる施設とするためにこだわったポイント

―― eスポーツイベントを開催出来る場所がすくないという課題は、業界の方にもお聞きしたことがあります。手軽な人数でeスポーツイベントを開催できる場所が増えるというのは良いですね。この施設を作るにあたって、こだわった点はどんなところでしょうか?

グラハム
まずは、駅前ということです。
東京には他にも良いeスポーツ施設がありますが、駅から少し離れた場所になります。
一般のお客さんからしたら、駅からどれだけ近いかはかなり重要なポイントになると思いますから、駅前というのが絶対のこだわりポイントでした。

その場所探しには苦労しましたが、1年半をかけて今回の場所にようやく出会うことが出来ました。600平米、柱なし、天井5メートル、駅から30秒、ここまでの状況を整えるのは本当に苦労しました。

―― 今日ここにきた時、本当に駅前で横断歩道を渡ったら施設に到着で、驚くと共にめちゃくちゃ楽でした。

グラハム
この稲門ビルは、高田馬場駅前で50年以上の歴史を持つ建物なんですね。そしてほかのテナントはマクドナルドさん、くら寿司さんといった大手なので、eスポーツ施設をやりたいということをオーナーさんに認めていただくのも大変でした。

毎週1回東京にきて、オーナーさんにeスポーツの将来性や、このビルが日本のeスポーツ発展に欠かせないものになるということを何度も説明させていただいて、最終的に利用を認めていただけることになりました。

しかも、すごく協力していただいて。本当はこのビル、24時間営業はできないところを特別に許可していただくことができました。さらに、時間外でも5Fの施設に来ていただけるように、エレベーターのシステムも変更対応してくださったりと、本当に力を貸していただいて実現した施設なんです。

マクドナルドさんですら22時閉店なのですが、いくらすばらしいeスポーツ施設でも、24時間提供できないと意味が無いと私は思っていましたから、ご協力いただいて本当に有難い話です。

―― さきほど施設を見せていただいた際に、オリジナルケースの小型パソコンが欲しくなるくらい格好良かったです。

グラハム
店内の設備もこだわっていまして、パソコン、デバイス、チェアなども良いものをセレクトしています。

イベントで施設内のデスクやパソコンを撤去したりする機会も多くなるので、入れ替え等の作業がしやすいよう、小型の水冷PCをオリジナルで作りました。ゲーミングチェアも、DXRacerのCraftという日本未発売モデルをオリジナルデザインでブラックとホワイトの2バージョン作っています。

モニターはeスポーツで最も信頼されるZOWIEで、デバイスも今後良いものをどんどん入れていく予定です。

―― さっき、コントロールルームを担当スタッフの方に紹介していただいたのですが、かなり良いものを使っているとのことでした。

グラハム
機材関連は1億円くらいかけていまして、日本トップレベルのイベントを開催できる機材が揃っています。この施設の機材をもっていけば、1万人規模のオフラインイベントなどでもそのまま使えるくらいのものになっています。

そして、設備としてもう1つこだわったのは、きれいなトイレを提供することです(笑)

―― 地味ですけど重要ですね(笑)

グラハム
大阪に作った施設で残念だったのはトイレをこだわって作れなかったことで、ビル提供のものを使わせていただいていました。今回は、数百人規模の来場があっても、快適に利用していだけるトイレ環境を作りたいという想いがありました。

コミュニティ大会を気軽に開催できる施設にしたい

―― 施設は4エリアにわかれていて、前に行くほど豪華になっている印象があります。どんな狙いでしょうか?

グラハム
大会やイベント開催と一般利用を同時にできるようにしたいと思いました。
今回の施設では、エリアを区切って利用出来るようにしたので、例えば『VALORANT』をやりに来た人が、ステージでやっている『ストリートファイター6』のイベントをみて、面白いと興味をもってもらう、実際にプレーしたいと思ってもらうような環境を作りたいと思っていました。

この施設で常に色々なコミュニティ大会を開いて、そのゲームを全然知らない人でも、プレーしてみる、観戦してみるという機会を増やしたいと考えています。

そういった狙いもあるので、コミュニティ大会の主催者の方が、10万円から設備を利用出来るようなプランを提供する予定です。

―― 自分は施設の利用料金相場があまりよくわからないのですが、10万円は結構安い部類になるのでしょうか?

成松兼吾(エグゼクティブマネージャー):
東京だとかなり安い方だと思います。10万円ですと、場所が借りられるだけで他の設備は無しで3時間という感じになるでしょうか。

山口:
オフラインでeスポーツのイベントをやりたいとなった場合に、ネックになりがちなのがインターネット回線です。自分も個人でeスポーツイベントを運営していたことがあるのですが、ゲーマーが納得する品質で有線接続できるような高速回線を備えた貸し会議室や施設というのはほとんどありません。

さらに、ゲーミングPCやゲーミングモニターを借りるとそれぞれ1台でいくらという感じになりますから、もし5vs5のFPSイベントを開こうと思ったら結構な金額になります。

この施設の場合、ゲーミングPC、モニター、チェア、デバイスはもちろん、ゲームも配信も出来る高速回線、音響設備、さらには超大型のLEDスクリーンもご利用いだたけるので、10万円というのはかなり安い金額での提供だと自負しています。

―― なるほど、確かにそう考えると必要なものが全てそろって10万というのはかなり安いのがわかりました。では、コミュニティ大会をやりたいと思っている方は、ぜひ施設を使ってほしいという感じでしょうか。

グラハム
はい、ぜひ利用を検討していただきたいと思います。
ここをゲーマーが大会やイベントを開くという夢が叶う場所にしたいと考えています。

成松:
コミュニティのみなさんに大会やイベントを開催していただいて、「ASH WINDER Esports ARENA」に来ると何かやっているという状態にできたら、僕らとしても施設を作った甲斐があったなと思えます。

グラハム
ファンミーティングを実施するeスポーツチームさんも増えていますから、そういう場所としてもご利用いただきたいです。

―― 「ASH WINDER」としては、自分たちでこの施設を利用した展開も考えていますか?

グラハム
自主企画のイベントや大会はぜひやりたいと思っています。
当社に所属しているキャスター・タレントさんがいますから、そういった人材を活用することもやっていきたいと考えています。

今後の日本eスポーツはキャスター育成が課題

―― MCN事業は3本柱の1つとして力を入れていきたいという話でした。VALORANTの公式キャスターさんも多く所属していますが、どのような展開を考えていますか?

グラハム
これからも所属者は増やしていきたいと考えています。
演者は、チームに入れないじゃないですか。

―― 補足ですが、VALORANTの公式キャスターは、公平性のためにeスポーツチームに所属していないことが求められるということですよね。

グラハム
はい。「ASH WINDER」としては業界を支える手助けをしたくて、それを柱とする3つの事業を通じて実現したいと思っています。演者さんたちと契約しているのは、支援するための一巻です。演者さんを使って我々が儲けるという仕組みではないような契約形態で取り組みをさせていただいています。

山口:
eスポーツイベントや大会の成功はキャスターさんなどの演者さんにかかっているといっても過言ではありません。そのくらい重要なポジションだと思っていますが、現状の日本eスポーツでは、演者をサポートする仕組みは少ないと思っています。キャスターさんが活動に専念出来るような環境を整えることが重要と考え、弊社がそこをサポートさせていただくという取り組みを行なっています。

グラハム
将来的には、イベント運営・施設・演者を1つのパッケージとして提供するようなプランを提供したいと考えています。あと、日本のeスポーツは若い世代のキャスターを育てていく必要があると感じています。

「ASH WINDER」は有名なキャスター陣に多く所属いただいていますから、彼らのノウハウを若い世代に伝えていく取り組みもしていきたいです。海外では女性キャスターがさまざまな大会で活動していますが、日本ではまだまだです。女性キャスターの発掘や育成も考えています。

いままで、オフラインのイベントで経験を積むことができるキャスターは一握りでした。特に若いキャスターにはオフラインイベント登壇のチャンスがなかなかありません。私たちにはこの施設があるので、ここで実施するイベントに出演して学んでいただく機会を多く提供できると考えています。

―― それは面白いですね。コミュニティ大会をやりたい人にも実況付きで出来ますよという話も出来そうですし、色々なチャンスがありそうですね。

グラハム
そうですね。そこで徐々にレベルアップして、1人前のキャスターになるきっかけとしていただければと思っています。

中国と日本のeスポーツシーン

―― 施設とは違う話になりますが、グラハムさんは中国・韓国のシーンに詳しいということでお聞きしてみたいことがあります。中国でeスポーツは国に正式な職業と認められて発展も目覚ましく、今後必要な人材は100万人単位というような記事を読んだりして桁違いの凄さを感じています。日本eスポーツも後ろから追い上げているような状況ですが、今後求められるのはどのような要素になると感じていますか?

グラハム
中国のeスポーツは、安定期に入ったような状態と言えるかと思います。
国にも認められて、安定した業界・職業であると認識されている部分があります。
日本だとeスポーツという新しいスポーツ・エンターテインメントがあるんですよと知ってもらう段階ですが、中国では当たり前の存在にようやくなりました。

あとは、テンセントやNetEaseという大企業がeスポーツをプッシュし続けているというのも強いと思います。中国はトップチームやパブリッシャーなど、上の方は安定している状態で最終的にこうなるというモデルが明らかになっている状態ですが、新しく入ってくる人材を教育したりする仕組み作りがこれから必要になっていくような感じでしょうか。
中国と韓国は、上から下に向かって作られていくような構造なので、下をどう拡げていくのかが課題となっています。

日本は、この上が固まらないという逆の状況かなと思っています。
強く経営力のあるチームが継続的に複数チーム存在している状況が必要です。
中国と韓国のLeague of Legendsプロリーグというのは、どの試合も良い試合でチームや選手も人気です。日本は特定チームに人気や注目が集中しやすい状況で、そのチームが勝てなくなったり人気が無くなると、シーン自体が一気に崩れていく可能性があります。

―― ZETA DIVISIONがVALORANTのMasters Tokyoに出場出来なかったとき、オフラインに観客が集まるのかという心配の声などもありました。結果的に、心配は杞憂でたくさんのお客さんが足を運んでいましたが。

グラハム
中国でもそういうことがありました。2017年のLeague of Legends世界大会は中国で開催されたのですが、中国は負けてしまい、決勝は韓国vs韓国になりました。中国のコミュニティでは、もう決勝は見にいかないとか、中国のeスポーツは終わったとか散々な言われようでした。実際は、韓国のすばらしいプレーを見ようとお客さんは会場に足を運んでいました。

そして、2018年に韓国で開催された世界大会では中国のInvictus Gamingが優勝して、中国におけるeスポーツの人気やイメージは大回復しました。やはり、自国やお気に入りのチームが負けると失望してファンの気持ちが離れてしまいますから、eスポーツにおいては勝つことが非常に重要だと思います。

―― eスポーツのドキュメンタリー等で、中国や韓国のチームの指導が非常に厳しいシーンなどを目にして、取り組みに対する意識の違いを感じることがありました。

グラハム
いま、日本はサッカー、野球、バスケなど強くて日本中が応援に熱狂していますよね。eスポーツも、そういう希望をみんなに見せる必要があります。だからこそ、いま日本のトップチームは責任重大だと思います。eスポーツを認めてもらうには、チームや選手がそこを背負う責任があるんです。

中国のトップチームは、マネジメント・コーチ・選手にいたるまで意識の改革を徹底します。「Invictus Gaming」は特にそうでした。世界大会に挑むときは、中国の全期待を背負っているのだから死ぬ気でやれという話を何度もして、本気でそのような気持ちで取り組んでいます。真のアスリートとして取り組むことができるかということですね。

―― 日本と中国のeスポーツチームで異なると感じる点はあったりしますか?

グラハム
日本は問題が起きるとチームが選手を切って収束させるということが多いと感じます。中国のチームも問題だらけでいつも炎上しています(笑) ただ、対応は違います。

もちろん問題となったことは反省して謝罪し改善を約束します。しかし真剣にやった結果こうなってしまった経緯を伝えます。そして、勝つためにこの人は無くてはならない存在で今後も一緒にやっていくのだという想いも共有します。最終的に、その人と一緒に結果を出すことを目指すというやり方です。

有能な選手や人材を切ればチームは弱くなります。弱くなれば人気が無くなってチームの価値が落ちていきます。eスポーツは競争の世界なので、強く優秀な人は残るべきです。失敗を取り戻すチャンスを与えられるような環境になって欲しいと思います。

―― 今回は色々なお話を聞かせていただいて非常に参考になりました。スタッフとして働いてみたい、イベントを開催したいというような方へのメッセージ等ありましたらお願いいたします。

グラハム
これからも様々なジャンルにおける日本のeスポーツコミュニティが盛り上がるよう、邁進してまいります。オフラインイベントの開催をご検討の際は、どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

ASH WINDER Esports ARENA

公式サイト:https://www.aw-a.net/
SNS:https://twitter.com/AW_ARENA

この記事を書いた人
Negitaku.org 運営者(2002年より)。Counter-Strikeシリーズ、Dota 2が大好きです。 じゃがいも、誤字脱字を見つけるのが苦手です。

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