eスポーツ向けのゲーミングデバイスを展開する『VAXEE』のCEO Xanver氏が来日しました。この貴重な機会に、Xanver氏に気になっていたことについて色々と質問をさせていただきました。
―― 今回、どのような目的で来日されたのでしょうか?
Xanver:ZYGENオーナーのnoppo氏が講演会を開催し、彼の経験を共有することで、eスポーツの業界に興味がある人たちの力になることができると思います。
そこで、私はnoppo氏のことを応援するために、それとこの場を借りて、日本からVAXEEをサポートしてくださっている皆様に感謝の気持ちを伝えるために、来日することを決めました。
VAXEEは日本の皆様から多くのサポートを受けていますので、日本オフィスのスタッフ達はとても忙しくしています。そこで私は、彼らの日々の仕事ぶりを実際に見て、応援と激励をしたいと思った、というのも理由です。
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―― 日本のファン達からVAXEE製品に対する愛を感じますか?
Xanver:VAXEEの設立以来、多くの日本の皆様からサポートを受けてきました、私たちはそれに心から感謝しています。
また、感謝の気持ちと同時に、VAXEEの製品を購入してくれた皆様にはたとえ些細な問題であっても、積極的に私たちに連絡してほしいと願っています。私たちに手間をかけたくないと、ためらいを感じる方々もいらっしゃるかもしれませんが、問題を知らせていただくことは、私たちに改善の機会を与えてくれるということです。
皆様のサポートを受けているからこそ、製品の品質の面でお返しをしなければ私たちも不安になってしまいます。継続的な改善こそが、皆様のサポートに応える唯一の方法だと私は信じているのです。
VAXEEが日本で成功を収めることができたのは、VAXEEが広く知られる以前から応援してくれた方々のおかげです、正式に感謝の意を伝えなければなりません。もちろんYossyさんはその中の一人であり、MamEさん、土屋さん、taka193bさんなど、全ての名前をお伝えしきれませんが、たくさんの方にお世話になっています。
また、VAXEE製品の発売以来、一貫して私たちを応援してくれている皆様もいらっしゃいます。そこで、言葉だけではなく、Tシャツのプレゼント企画を通じてで感謝の気持ちをお伝えすることも進めています。
―― XanverさんはZOWIE時代、ゲーミングデバイスを設計する際、Counter-Strikeシリーズをもちいてきました。VAXEEの製品開発も引き続きCounter-Strikeシリーズでのゲームプレイに焦点をあてたものになっていますか?
Xanver:VAXEEをサポートしてくださっているお客様の多くがCounter-Strike 2やVALORANTのプレイヤーなので、VAXEEの製品開発のベースは主にこの二2のゲームプレイに基づいたものとなっています。
―― Xanverさんは、これまで多数のゲーミングデバイスを開発してきました。ハードウェアに関するアイデアが生まれるのはどんな時でしょうか?
Xanver:製品を使って良い使用感を得られなかった時に、何か違う方法を取ることでより良い使用感を得られるのではないかと私は考えるようになりました。
最初にマウスを開発する際、同じデザインのマウスを異なるサイズに分けるアイデアを取り入れたのですが、これはCounter-Strikeの世界大会である『World Cyber Games 2002』に参加した時の経験から得たものです。
当時、IE 3.0というマウスが最も多くのプレイヤーに利用されていたモデルでしたが、私はどうしても慣れることができませんでした。より詳しく観察してみると、欧米の選手達は手が大きいため、マウスを握りやすいことに気づきました。
それに比べて私の手は比較的小さいため、IE 3.0を握っても彼らと同じような握り心地は得られませんでした。そのため、デザインが同じでも、より小さいサイズが必要だという考えが生まれました。
他にも似たような経験はたくさんあります。例えば、ディスプレイの高さや表示設定を頻繁に調整することから、高さ調整機能やリモコンがあると調整がより便利になると考えました。また、ORYZAを作ろうと思いついたのは、従来のマウスバンジーにはケーブルを動かした際に抵抗感があったため、回転軸を追加することで抵抗感を減少させることができるのではと考えたからです。
幸運だったのは、若いころに上司が私のアイデアを高く評価してくれたことです。自信と経験を積み重ねるうちに、より良い使用感を追及することが、次第に生活の習慣となっていきました。 ライフスタイルが変化していく中、今後はeスポーツ向けの製品だけでなく、日用品の開発にもこの経験を応用し、活かしていきたいと思っています。
―― プレイヤーたちのゲーミングデバイスに対する要求や使用方法について、変化を感じたことはありますか?
Xanver:私たちの開発方針は、プロのeスポーツシーンに焦点を当てています。環境が変わり、プロプレイヤーの習慣も変化していますが、変わらない核心があります、それは高い性能と耐久性が必要だということです。
この2つの前提に基づいたうえで、それぞれの時期に合った異なる嗜好のものを提供しています。例えば、初期のプロプレイヤーは大きなサイズを好む傾向があり、軽すぎる重量には慣れていないという特徴がありました。しかし、現在は小さなサイズであっても重すぎないことが好まれています。
この過程で、常に私たちのコアバリューが逸脱していないかを確認しなければなりません。例えば、多くの方々から軽量なマウスを作って欲しいという提案がありましたが、私たちには軽さと耐久性を両立させる方法がありません。そのため、私たちは安定した品質にこだわり、徐々に軽量化を目指しています。
VAXEEにとって重要なのは、高い性能と耐久性を維持しながら、私たちの能力の範囲内で、様々なニーズに応えていくことです。
―― Xanverさんほど実績を持つハードウェア開発者だと、他社からヘッドハンティングのオファーが届くようなこともあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
Xanver:はい、若い頃にはありましたが、働いていたチームを離れるつもりはありませんでした。なぜなら、私の働き方は他の企業にはあまり合わないかもしれないと思ったからです。逆に、選手を引退した後の最初の仕事で、志を同じくする上司やパートナーに出会えたことは幸運でした。そして、今でも彼らと一緒に働いています。
また、若い方々にも共有できることがあります、それは「高い給料を得ることよりも、働く環境やパートナーを見極め、興味を持つ仕事を見つけることの方が重要だ」ということです。
私自身の経験上、プロのeスポーツ選手から製品開発、マーケティングへの転身、最終的には上司の信頼を得てVAXEEのCEOになるまでの道のりで、高い給料に惹かれないという私の選択が正しかったと確信しています。この過程では苦労もありましたが、非常に楽しかったということは言うまでもありません。
―― 新しい形状のマウスを発売する予定はありますか?
Xanver:次のモデルは、ワイヤレスモデルの「ZYGEN NP-01」「VAXEE XE S」「OUTSET AX S」で、既にカスタマーサポートやフォーラムで公開しています。 早めにお知らせしているのは、何度も購入する必要がないようにするためですが、すべてを一度にリリースすることはできませんので、ご容赦ください。
「ZYGEN NP-01 Wireless」がnoppo氏講演会の会場で先行お披露目された。左サイドのカーブが、有線版と若干異なる調整となっている。
―― Xanverさんが設計する製品は、極力シンプルを目指しているように感じます。マウスに絶対に加えたくない機能を1つ挙げるとしたら、それは何ですか?
Xanver:RGBライティングです。キーボードのライティングデザインは取り入れていますが、RGBなしの単色です。これは、ユーザーが暗い環境でもキーキャップの文字を認識できるようにするためです。しかし、マウスにRGBを追加することは考えていません。
―― Xanverさんが他社のマウスで気になるものはありますか?
Xanver:はい、Razer、Logitech(Logicool)、Ninjutso、ZOWIE、Endgame Gear、SteelSeries、Pulsar Gaming Gearsなど、挙げればきりがないほどのマウスを所持しています。これの主な理由は、VAXEEのカスタマーサポートをより専門的にしたいからということです。
例えば、お客様が特定のマウスのデザインからVAXEEのマウスに変えたい場合、適切なデザインをおすすめし、その違いをできるだけ丁寧に説明することができます。
また、VAXEEの採用において、FPSゲームができることが最も重要な基準となっているのですが、これは上記のカスタマーサポートのためです。そうでないと、お客様の問題や疑問をちゃんと理解することができず、カスタマーサポートの質が損なわれてしまう可能性があるためです。
―― Xanverさんが使っているマウス、マウスパッド、キーボード、ヘッドセットを教えてください。
Xanver:マウスは「ZYGEN NP-01S Wireless」、マウスパッドは「VAXEE PA Summer23」、キーボードが「REALFORCE GX1 (45g)」、サウンドは「ZOWIE VITAL」 + イヤホンを使っています。あとで写真をお送りしますよ。
―― 動画でデバイスやeスポーツの魅力を紹介する「eSports Xanver」シリーズ続編の公開予定はありますか?
Xanver:私の経験や考え方をもっとシェアしたいと思っていますが、今のところ続編の予定はありません。私は現在VAXEEでの仕事に集中していますし、個人のファンページもほとんど更新していません。今後、適切なテーマが見つかり、時間があれば、また撮影を検討したいと思います。
―― VAXEEはeスポーツ向けとは異なる製品を発売する予定はありますか?
Xanver:VAXEEは当初から、私たちがECプラットフォームであることを説明してきました。 私たちの仲間の大半はeスポーツプレイヤーまたはeスポーツの愛好家であるため、私たちはVAXEEのサポーターの多くと同じような生活習慣や要求をもっていると考えています。その中で最も重要な要素が、ショッピングをする際により良いユーザーエクスペリエンスを提供できるよう優先することです。
また、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための多くのアイデアがあり、これらのコンセプトはeスポーツ製品にのみならず、日用品にも適しています。そして、VAXEEのスタッフやeスポーツ愛好家であっても、eスポーツは私たちの生活のすべてではありません。
現在、私はeスポーツ製品の開発に専念しておりますが、VAXEEの創設者であるVincentが日用品を扱う新しい部門の指揮とサポートをする予定です。Vincentはeスポーツの出身ではありませんが、適任者を見つける能力は非常に鋭いです。
例えば、初期のeスポーツ製品開発ではHeatoNやSpawNといったプロ選手を見い出して、すばらしい製品を作り上げてきました。同じ経験は日用品の開発にも応用できるため、皆さんに実用的な製品を提供できることを、とても楽しみにしています。