プロeスポーツチーム『REJECT』が2023年のVALORANT部門ロスターを発表しました。
2023年のロスターは、トライアウトで選定したベラテン2名 + 若手3名の5人選手構成となります。
日本FPSのレジェンド南慶紀(KeNNy)氏が引き続きヘッドコーチを担当します。新コーチに元サドンアタック日本一・VALORANTプロ選手といった実績を持つFlame氏が就任し、2022年シーズンにアナリストを担当したMikke氏がコーチを兼任する形となります。
REJECT VALORANT 2023
REJECT #VALORANT Div.
■Roster
#1 Flax(@flax_cs)
#5 Skyfull(@EinRetterKline)
#9 ЯIA(@RIA_memories)
#13 Allen(@Allen_vlr)
#8 BRIAN(@BRIANvlrt)■Coach
KeNNy(@fpskenny)
Flame(@yunijp)
mikke(@mikke1130)— REJECT (@RC_REJECT) December 7, 2022
REJECTは『2023 VALORANT Champions Tour』のインターナショナルリーグにパートナーチームとして参入するべく準備を進めていましたが、残念ながら狙い通りの展開にはなりませんでした。
2023年は「Challengers」を勝ち上がり、2024年の「インターナショナルリーグ」入りを目指すことに挑戦していきます。
今回、VALORANT部門新体制のコンセプト、選手選定の理由、『VALORANT Champions Tour』の新システムについてなど、ヘッドコーチを務めるKeNNy氏、マネージャーのお2人に話をうかがいました。
Yossy:インタビューの機会をいただきありがとうございます。2023年の体制が決定したそうですが、とんでもないメンバーが揃ってしまった感じですか?
KeNNy:とんでもないと言いますか、VALORANTシーンを知っている方が見たら意外なメンバーかもしれないですね。
2023年のロスターは、「Flax」「Allen」「ЯIA」「BRIAN」「Skyfull」の5名になります。そして新コーチとして「Flame」、「Mikke」がアナリスト兼任コーチという形になりました。
Yossy:おお、Flaxさん。知った名前の選手も多いですね。コーチは、新しい方ですよね。
KeNNy:サドンアタックで私と同じチームで活動していたFlameです。
Yossy:元NabDのFlameさんですか。選手とコーチ陣を合わせて8名体制ですね。
KeNNy:今後、コーチやアナリストは補充する可能性もあります。
Yossy:2023年のREJECTは、Challengers を勝ち抜くことが最大の目標になると思いますが、チーム作りのコンセプトみたいなものがあれば教えていただけないでしょうか。
KeNNy:2023年はChallengersリーグで優勝し、その先にあるインターナショナルリーグへの参入を目標として活動をしていきます。
パートナーチームの発表までは、インターナショナルリーグに入ることが出来た時を想定して動いていました。残念ながらそれは叶わなかったのですが、Challengersリーグで戦うにしても長期的に同じメンバーでやっていかなければならないので、やる気とモチベーションのあるメンバーで組成したいと考えました。
Challengersリーグを勝ち上がるチームを新たに作るのに必要なメンバーについて考えた時に、いまトップで活躍している選手というよりは、まだ日の目を浴びていない若い選手を選ぶことにしました。
若い選手は、ハングリー精神がすばらしかったり、1日16時間VALORANTしていますという人が結構多くて、とにかくやる気に満ちあふれている人で組成しようというチーム作りをしてきました。
マネージャー:VALORANTというゲームは、アップデートが速く変化が激しいタイトルで、そこに対応出来る選手というのは非常に少ないと思っています。
この変化に対応するために一番必要なのが、言われてやる受動的な姿勢ではなく、自分で考えて動くことが出来るという点です。
そういった人材を前提として、まだ若くてシーンに認められていなかったり、ハングリーさを忘れていない選手など、VALORANTシーンで勝つために常に自身をアップデートしていける人材を揃えました。
VALORANTはすごく恵まれているタイトルということもあり、現状で満足して努力が出来なくなってしまうような選手もいますが、今回のメンバーにその心配はないと確信しています。
Yossy:個人的に、ロスター発表で一番知りたいと思っているのが「なぜこの選手なのか」という事です。どのような形で決めたのでしょうか?可能であれば、各選手を選んだ理由について教えていただきたいです。
KeNNy:強いのはもちろん前提として、あとはゲームに対する理解度だったりとか、個人の感情で雰囲気を乱さない人だったり、そういったものを高水準で求めていました。そのため、トライアウトが結構長引いてしまって3週間くらいやらせてもらいました。
Yossy:トライアウトには何人くらいの選手が参加しましたか?
KeNNy:約20人くらいの選手に参加していただきました。この場をお借りして、急なご連絡にも関わらず快くご参加いただきありがとうございました。その結果、2023年のチーム構想に合わせて選ばせていただいたのが今回の5人になります。さきほどお伝えしたように、若い選手でチームを組成したいという考えがありました。
ただ、トライアウトを進めていく過程で、若い選手だけで編成してしまうとがんばって結果が出ない時に、チームとして崩れてしまうのではないかという懸念が出てきました。モチベーションを無くしたり、諦めてしまうようなことがありがちなのですが、そこでもっとがんばろうよと引っ張っていける人が必要だと考えました。
KeNNy:そこで、1人か2人くらい20代前半くらいのベテラン選手を入れた方が良いのではないかという意見が出てきた時に、Flaxを選びました。
Flaxについては一番最初からトライアウトに参加してもらっていて、『CS:GO』『VALORANT』とタクティカルFPSの経験が豊富で、年齢も23歳というところで若いメンバーの先輩・お兄さん的な役割を期待出来ると思っています。
さらに、フィジカルが強くてゲームの理解度も高く、IGL(インゲームリーダー)も出来るのでめちゃくちゃ高スペックなんですよね。
Yossy:イケメンで筋肉もすごいし。
KeNNy:欠点ないですねw トライアウトを進めていく中で、Flaxは外せないなということで、Flaxを軸にチームを構成していくことにしました。
KeNNy:AllenもFlaxと同じタイミングでトライアウトを受けてもらっていて、彼はコントローラー専なんですね。
スモークがめちゃくちゃ上手くて、トライアウト中誰よりも高いパフォーマンスを出していました。色々な選手を見ていく中で、スモーク使いでここまでのパフォーマンスを発揮出来る選手というのはなかなかいないというところで評価の高い選手です。あとは、若くてとにかくやる気があります。
KeNNy:ЯIAは元々Flaxと同じチームだったというとこもあって、Flaxが高く評価しています。ゲーム理解度も素晴らしくて、Flaxと同じようにIGLが出来ます。
元々コントローラーを使っていましたが、他のロールをお願いしたら柔軟に対応してくれたところも魅力で、ЯIAもAllenと同じ19歳で若くてやる気があって普段からとにかくランクをまわしたり、フィジカルもめちゃくちゃ強いところで期待しています。
KeNNy:BRIANは元々REJECTのACADEMY部門で活動してくれていました。いま17歳でメンバーの中では一番若い選手です。
最初のトライアウトにも参加してもらっていたのですが、そこではパフォーマンスがあまり良くないと感じて採用は見合わせていました。
ЯIAの加入が決定した後、「BRIANは本当に強いから改めてトライアウトして欲しい」と推薦がありました。次のトライアウトでは、別人のようなパフォーマンスを発揮して驚きました。
Yossy:短い期間で成長したのか、本来の実力が出たのか、チャンスをものにしたというのは面白い結果ですね。
KeNNy:ゲーム理解度という点ではFlaxやЯIAにはまだ及ばないのですが、コーチからの個人フィードバックを行ってから現時点でも凄まじい成長を遂げています。フィジカルに関してもとにかくすごくて、今回のメンバーの中ではトップを誇るくらいのフィジカルの持ち主なので期待しています。
KeNNy:SkyfullもFlaxと同じく初期からVALORANTをプレイしている古参プレイヤーです。ゲーム理解度がかなり高いのはもちろん、対応出来るロールが幅広いんですね。チームメイトの動きに合わせるといったサポートも上手いです。過去のFPSタイトルでIGLの経験もあります。
そういうフレキシブルな選手がチームにいるのは重要だなと思っていて、フィジカルは申し分ないし、報告も的確でよく喋るし、年齢は24歳でベテランとして若手をひっぱる役割も担ってもらう感じです。
KeNNy:Flameは、サドンアタックで自分と同じチームで何度も日本一になった実績を持つプレイヤーで、VALORANTでは2020年頃にSengoku Gamingでプロとして活動していた事もあります。
今後はコーチとしていままで培ってきたFPSの経験やノウハウを伝えていきたいという想いがあって、今回ご縁があって加入してもらうことになりました。
トライアウトでの選手選びには、Flameともう一人のMikkeコーチも参加していて、自分の考えや意見を出しながらチーム作りにも貢献してもらっています。
アウトプットが非常に上手くて、メンバーからもすでに信頼を獲得していたりと、良い関係を築いています。
KeNNy:Mikkeさんは、LCQ終了後も引き続きREJECTでやっていきたいと言ってくれて、前回所属していた選手から、ゲーム理解度においてリスペクトを持たれていた貴重な存在です。
元々はアナリストを担当していたのですが、日々の活動もコーチと一緒に入ってもらっていて、コーチのようなこともしていたという経緯があって、新チームでは兼任でコーチを担当してもらいます。
Yossy:Mikkeさんはクロスファイアの大会で何度も見てきたので、いまもこういう形でシーンに関わってくれているのはとてもうれしいですね。
Yossy:VCT2023のパートナーシップチーム申請を行なっていたという話がありました。残念ながら日本からは2チームしか選ばれませんでしたが、手応えや気持ちとしてはどうだったでしょうか。
KeNNy:結果を聞いた時はショックというか、本当に悔しかったです。社内ではみんなが間違いなく選ばれるだろうと思っていましたし、それだけ自信を持った準備をしていましたので。
マネージャー:日本からは3~4チーム選ばれるのではないかというような噂話もあって、手応えとしても選んでいただけるような自信がありました。インターナショナルリーグに出場する前提で次の準備をしていたので、すごく落ち込みました。
ですが、すぐに切り替えて2023年を勝ち抜いてインターナショナルリーグ出場を目指そうと、ポジティブな気持ちで新チーム作りを進めてきました。
Yossy:2023年のVCTシステムが大きく変わった事についてどう思いますか?個人的には、期待する一方で残念に思っている部分もあります。ファン的な意見だと「REJECTの5名が好き」という理由で応援していた人が出来なくなってしまったりとか。チーム的な視点では、投資したり育てていた選手がバラバラになったり、他のチームに移籍してしまったりという部分が悔しいのではないかとか。どうしても引っかかるものがあるのが正直なところで、どう思われているのかなと気になっています。
KeNNy:そうですね………。競技シーンを長年見てきて、理想形にわりと近いと思っています。なぜかというと、いままでの形式はカジュアルに大会に参加出来て、全ての参加者にプロチームと対戦できるチャンスがあり、その先には世界にも挑戦することができる場だったと思います。
一方で、シーンにどっぷり浸かって観戦している人からすると、トップ層 対 カジュアル層の試合になると一方的な試合展開になることが多くて物足りなさを感じてしまう。カジュアル層がフルタイムで活動しているプロチームに勝てる確率は低いと思っていて、今回の新しい仕組みでは、レベルが高いチーム同士の試合が随時行なわれていくので、レベルの高い試合を望んでいる方にとってはこのシステムはありなんじゃないかと思いますね。
反面、インターナショナルリーグに参入が決まったチームに、出場を希望するトップ選手が移籍してしまうということが各エリアで起きています。志の高い選手にとっては、より高みを目指せる環境に身を置きたくなるのは当然のことだと思いますが、先ほどおっしゃった「このメンバーだから応援していた」方もいると思いますので、こういった点については、残念と思う気持ちがあります。
REJECTに所属していた4名の選手がインターナショナルリーグ参入チームに移籍してしまいましたが、個人的には選手の意志は尊重してあげたいと考えています。契約期間が残っていたりする場合、選手を手放さないということをやろうと思えば出来てしまいますが、それは選手の将来を考えたらやるべきではないし、高みを目指せるより良い環境でプレイしてほしいという思想があります。ですので、元々いた選手たちと一緒にやっていきたい気持ちはありましたが、仕方が無いと思う部分ですね。
あとは、今回の仕組みになったことによってコミュニティの分裂につながらないか危惧しています。
VALORANTというタイトルは異様な盛り上がりを見せていて、その影響で多くの人に対してeスポーツを観戦するという文化や土台が出来上がり始めてきたタイミングだと思っています。
インターナショナルとドメスティック(国内)を両方追うのは、時間や体力的にもすごく大変なので、どちらかを見る形になるのかなという話もしています。
ZETA DIVISIONさん、DetonatioN Gaming さんという日本代表の活躍が追い風になってプラスの方向に向かうのか、試合を追うのが大変になると思うので、いまみたいな盛り上がりが続くのか気になります。
これまでは日本予選を勝ち抜いたチームが日本代表として世界に挑む構図というのが非常に熱くて、その結果コミュニティ全体が熱狂したという背景があると思うので、リーグ化することでそういう流れが生まれにくくなってしまうみたいな部分が、実際に始まってみないとわからないですが、どうなっていくのか怖い部分だと思っています。
Yossy:インターナショナルリーグへの参入は非常に厳しく、Challengersを勝ち上がって最終的に昇格出来るのはEMEA、南北アメリカ、APACから各1チームのみです。そこを目指すのは、プロチームと言えどもかなりハードルの高い戦いになると思いますが、それでもREJECTがチャレンジしようと決めたのはなぜでしょうか。
マネージャー:REJECTというチームは、「常に挑戦者である」という根っこの考えを持っています。今回でいえばもっと実績のある選手を選択することも出来ましたが、この「挑戦者」というビジョンに共感してくれたメンバーを重視して集めました。
そしてREJECTは競技で1位になることを常に目指しています。
VALORANTという、今一番勢いのあるeスポーツタイトルでインターナショナルリーグに落ちてしまったという結果はあるものの、チームとしての根っこにある目標に向かうということは全くブレていないので、今取れる最善の選択をするのみでしかないと思います。
その後に結果が待っていると思うのでそこを信じてひたすらに進んでいるという形ですね。
選手達も、そのビジョンに共感してくれているので本当に同じ方向を向いて走って行けると強く思って活動しています。私たちは出来る事すべてを最大限サポートして、あとは結果を残すだけです。
ファンの方も、REJECTが挑み続ける姿に共感してくれている方もいると思うので、新メンバーを引き続き応援してもらえたらうれしいですね。
KeNNy:国内王者になり、さらにAPACのChallengersで優勝しなければならないというのは、確かに相当高い壁だと思いますが、その実現に向けて本気になって、モチベーション高く取り組んでいくことが出来る選手で今回のメンバーを集めました。
個人的には、日本のチームが世界で結果を残す姿をもっと見たいと思っています。今回インターナショナルリーグに選ばれたZETA DIVISIONさん、DetonatioN Gamingさんはもちろんですし、それがREJECTで実現出来たら最高です。それが実現できた時には、応援してくださってるファンやコミュニティ、お世話になった方への恩返しにもなるのかなと思います。
すぐに結果が出るものではないとは思いますが、一緒に成長していくことが出来るメンバーなので、目標実現を目指していく姿を応援していただけると嬉しいです。