アジアのCS:GOシーンを紹介するニュースサイト『CSGO2ASIA』の独占インタビュー「THE MAN BEHIND THE MICE – XANVER TSENG」を日本語訳する許可をいただいたので紹介します。
「※」が付いているものは、当サイト運営者による補足です
『CSGO2ASIA』の新たなインサイトセクション‘Behind The Scenes’の第1弾として、ZOWIEの製品開発を担当する Xanver Tseng氏に独占インタビューを行ないました。
Xanver: みなさん、こんにちは。Xanver Tsengと申します。主にZOWIEの製品開発、マーケティングを担当しています。
Xanver: ブランドのスタイルや製品を見ていただければ、ZOWIEがプロフェッショナルのesports製品だけを作りたいということがわかると思います。
ZOWIEの製品は、スペックや目を引く見た目をベースとして開発していません。そのため、消費者(※であるゲーマー達)と自然なコミュニケーションを取ることが出来るのは製品開発者だけなのです。
また、私は2002~2004年の『World Cyber Games』に台湾代表(※「FFTWN」)として出場したesportsアスリートでもあります。これが、一人二役を担当している理由です。
Xanver: 選手として活動していた時、ヨーロッパのゲーミングデバイスブランドがチームのスポンサーで、ZOWIE創設者のVincentさんはそのブランドで働いていました。
2004年の『World Cyber Games』が終わった後にesportsに関する仕事に就けるチャンスはほとんどありませんでした。Vincentさんは、ゲーミングデバイスの開発にはプレーヤーのノウハウが必要であると感じており、自分がesportsに対する情熱と決意があることを見抜いてZOWIEに参加するようオファーしてくれました。
自分にとってゲーミングデバイス開発は全く新しい領域でしたが、常に新しいことを学んでいたため、製品開発に強い興味を持つようになりました。
Xanver: それには3つあると思います。
1つ目は経験です。18年前、IE3.0(※Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0)は多くのゲーマーに愛されるものでしたが、自分にとっては大きすぎて、使うことが出来ませんでした。快適な形状のまま異なるサイズがあるべきだと感じて、これがEC1、EC2を誕生させるインスピレーションの源になりました。
2つ目は観察力です。自分は、自身だけでなく他のプレーヤー達のプレー習慣も観察することを始めました。アメリカやヨーロッパのプレーヤーと一緒に働く事で、ゲームにおいて彼らがどのようなことを求めているのか理解することが出来ました。Counter-Striekが全員の共通言語だったので、製品にどのような機能があると良いかすぐに理解することができました。
最後の1つは、学ぶことです。自分には製品デザインのバックグラウンドはありませんが、日々新たな事を学んでおり、それが私にインスピレーションを与えてくれていると思います。
Xanver: 新しいマウス形状のアイデアが浮かんだ時、最初にするのは粘土で形を再現することです。それが求める形であると確信出来たら、異なるプレースタイルを持つZOWIEの仲間達と形状について議論を重ねます。
形状について合意が得られたら、次は石膏の型を作ります。それが目的の形状である事を改めて再確認した後に、作業モデルの作成に取りかかります。
多くの場合、ここで設計段階に戻ることになります。ゲーム以外だと快適なマウスに感じるのですが、ゲームで使用すると何かが欠けているのです。
Xanver: ZOWIEは、製品を開発する時にPC周辺機器ではなくスポーツ用品を作る事を常にコンセプトとしています。最新技術を使うことが必ずしもesportsに適しているとは限りません。例えば、非常に高いDPIのマウスはesports選手に全く必要ありません。
esportsにおけるイノベーションとは、既存の技術を使って選手達に安定性、快適さ、耐久性を持つ製品を提供することからやってくると思っています。
例えば、メカニカルキーボードの軸はその耐久性で知られています。これは長いこと存在していた技術ですが、ゲーミングデバイスに広く使われるようになったのは近年になってからです。
自分のような古いFPSプレーヤーが100Hzのリフレッシュレートを求めて常にCRTモニタを使っていたのと同じです。その間、薄型LCDは姿を消しましたがいまでは144hz、240zのモニタとなって戻ってきました。
(※当時CRTから新しい技術による液晶モニタに移行していく流れがありましたが、100Hz出せない液晶モニタはゲーマーに受け入れられず、特にFPSゲーマー達は古いCRTを使い続けていたという話かと思います)
Xanver:製品には設計と製造の段階があります。自分の強みはデザインにあり、チームは生産に関する特別なスキルを持っているメンバーがいます。
マウスに加えて、ZOWIEのマウスパッドはゲーマーたちが高い使用率を誇る製品の1つです。ZOWIEのマウスパッドは100%フラットなのが特徴です。この品質を維持するためのチームが存在するほどです。また、出荷前の最終テストと検査にフォーカスしているメンバーもいます。
ZOWIEの同僚達が、これらの全てを担当しています。自分だけでなく、チームの全員が「Strive for Perfection(※完璧を求めて)」のブランドスピリットを追求するためにこだわって仕事に取り組んでいるのです。
Xanver: もちろん、非常に幸せなことです。これはZOWIEのCounter-Strikeに対する継続的な情熱の結果と言えるでしょう。2011年は、Counter-Strikeにとって最も暗い年で、多くのゲーマーはLeague of Legendsに移行していきました。
しかし、ZOWIEはCounter-Strikeにフォーカスし続け、決してCounter-Strikeから逃げませんでした。これこそが、ZOWIEチームのメンバーがCounter-Strikeのプロたちと良い関係性を築いている理由の1つです。
Xanver: 自分に加えて、CS1.6でesportsをしていたメンバーがZOWIEのチームには他に6人います。
創設者のVincentさんはCounter-Striekeを観戦するのが大好きです。たまにプレーするのですが上手くはないので、いつも自分達にからかわれています。このように、ZOWIEは上から下まで、全員がCounter-Strikeを愛するチームなのです。
ですから、ZOWIEがFPSゲーマーの期待に応える製品を手がけてきたのは当然のことだと思います。
Xanver: トーナメントで優勝した中国の team 7PM.feが、勝利インタビューにおいてコーチやサブメンバーなし、自分達の能力だけで優勝にたどり着いたとコメントしました。
これは、チームにリソースがなく、日中に仕事をしながらゲームの練習をしていた20年前のCounter-Strikeを思い出させるものでした。最近では、男性のCounter-Strikeシーンはかなり成熟したものになっていますが、女性シーンは20年前の自分と非常に似た境遇だと思います。
自分はもう選手ではありませんが、DIVINAチームの一員としてこの大会を通じてより多くの女性プレーヤーが注意を向けられるプラットフォームを提供できることにとても感謝しています。
また、2011~2012年には、StarCraftIIでZOWIE DIVINAトーナメントを開催しました。ZOWIEは、女性esportsをサポートすることにいつでも情熱を注いでいます。
上記までが元記事の翻訳となります。
記事の内容を読んで思ったのは、ZOWIEは製品開発哲学がとてもしっかりとチーム内に浸透しているなということです。
台湾BenQのスタッフはこれが特に顕著で、これまでに会ってお話しさせていただいた全ての人が、「ZOWIEのゲーミングデバイスはesportsのための製品である」ということを明確に認識しています。
そのため、話がそれた方向に向かっていくと「それはZOWIEのコンセプトとは異なる」ということになります。これが浸透していることでZOWIEの展開にブレが無くなるので、本当に素晴らしいことだと思わされました。
そして、今回のエピソードに出てきたCounter-Strike愛の話も最高ですね。
翻訳を許可してくれたNikhilさん、ありがとうございました。
Thank you for allowing translation, Mr.Nikhil.
ZOWIEの製品哲学に関する話は、以下の関連記事に入れた座談会のレポートもぜひ読んでいただくとさらに理解が深まると思います。
『ZOWIE GEAR』が SpawN、HeatoN と共にメディア向け座談会を実施、『ZOWIE GEAR』 のゲーミングギアは真剣なゲーマーのためのもの