2017年11月24日~25日にアラブ首長国連邦で開催されたF1公式eスポーツ大会『F1 ESPORTS Series』で、 Brendon Leigh 選手(18歳)が初代チャンピオンの座を獲得しました。
『F1 ESPORTS Series』グランドファイナルは、F1グランプリ最終戦『アブダビGP』のプログラムに組み込まれる形で、会場のヤス・マリーナ・サーキット内で実施されました。
グランドファイナルは3つのコースで、予選と決勝を1レースずつ行い、それぞれのによって得られるポイント合計で最終順位が決まります。
グランドファイナルの王者を決定する最終レースは、実車レースと同じ「ヤス・マリーナ・サーキット」を舞台とし14周で争われ、最終ラップで劇的なオーバーテイクを魅せた18歳の Brendon Leigh が初代チャンピオンとなりました。
車体性能での追上げが難しいeスポーツF1
3レースの内、レース1(サーキット・ジル・ビルヌーブ)のみが初日に行われ、この段階でポイントが1ポイントでも獲得できていれば、レース3の結果次第によって表彰台の可能性があるポイント割り当てとなっていました。しかし、eスポーツでは実写と異なり車種による性能差がない状況となるため順位を上げるのが非常に難しく、現地時間の2日目、午前中から夕方に行われたレース2、レース3の練習走行及び予選走行で、最終順位がほぼ見えてくるという展開でした。
初日のレース1を制したのは Brendon Leigh で25ポイントを獲得。
日付が変って、レース2(サーキット・ド・スパ-フランコルシャン)、レース3(ヤス・マリーナ・サーキット)の練習走行と予選が一気に行われましたが、レース2予選では Brendon Leigh は、十分なパフォーマンスを発揮できず15位とふるいませんでしたが、レース3予選ではパフォーマンスを取り戻し、2位に付け本番のレース3に望みを繋ぎます。
その後F1 アブダビGP(実車) 最終戦の予選終了後、レース2決勝が行われ、 Brendon Leigh は15位から7つポジションを上げポイント圏 8位フィニッシュ。
レース2が終わった段階で獲得ポイント1位は Sven Zurner と F. Donoso Delgado が30ポイント、3位 Brendon Leigh 29ポイントなり、レース3の予選でもこの3名がセカンドロー内(1位~4位)ということもあり、表彰台はほぼこの3名に絞られ、獲得ポイントがほぼ倍となるレース3がスタートを迎えました。
レース3の予選は1位 F. Donoso Delgado、 2位 Brendon Leigh、3位 Maximilian Benecke、4位 Sven Zurner、5位 Patrik Holzmann、6位 Salih Saltunc と 展開次第では番狂わせも期待されましたが、スタートから1コーナーは接触のないきれいなスタートを切りました。
そのようなクリアな展開の中、2位スタート Brendon Leigh がインスタートを活かした素晴らしい立ち上がりを見せ、1コーナーで F. Donoso Delgado を抜き去り1位を奪取。その真後ろにつけていた4位スタートの Sven Zurner も、開いたその隙間を抜けて2位にポジションアップします。
3周ほど経過した段階で、1~3位が1秒以内、3位から4位へは2秒のギャップがあるため、1位 Brendon Leigh、2位 Sven Zurner、3位 F. Donoso Delgado の中から表彰台の頂点が決まりそうな流れ。
そんな中、動きを見せたのは3位 F. Donoso Delgado。4周目という早いピットインで9位まで順位を落としますが、各車必ず1回はピットインしてUltraSoftタイヤからSuperSoftタイヤへの切替と燃料の補給を行う必要があり、この早いピットインが全車のピットアウト後、順位にどう影響されるのか注目されました。
レースは5周目のセクター2で2位 Sven Zurner が仕掛けハードブレーキ勝負からの際どいターンで1位を獲得。抜かれた Brendon Leigh はマーシャルへペナルティアピールをするも、文句なしのクリアパス。順位が入れ替わった5週目の終わり、なんと1位と2位が同時にピットイン。
この時、各車のピットレーン位置とそれまでの燃料配分の微妙な違いにより、ピットアウト前には Brendon Leigh が、 Sven Zurner の前に立ちます。このままトップでコース復帰かと思われましたが、地下にピットレーンが長いヤス・マリーナ・サーキットでコースに復帰すると Brendon Leighの前には、さきほど早めの4周目ピットインをしたと紹介した F. Donoso Delgadoが現れ、フレッシュなSuperSoftタイヤを活かしてピットアウト後の暫定トップに立ちます。
6周終わった段階で、この3名の前に、ピットインを行っていない2台が7秒前にしばらくいますが、その2台が9週目ピットインした時、1位の F. Donoso Delgado とのギャップは、3秒にまで縮まり3台のペースの速さを知らしめます。
トップ3台が1秒以内に絡みあったままの11周目、セクター2で2位 Brendon Leigh が、3位 Sven Zurner に接触される形でバランスを崩しその復帰を優先したため、1位との差が2秒に広がりました。 Sven Zurner は接触の非を認め直後に減速、 Brendon Leigh に2位を譲り、自らの接触のダメージもありトップ争いからは脱落。
その後、2秒のビハインドを猛追する Brendon Leigh は12~13周で接触時のロスを取り戻し、1位 F. Donoso Delgado をDRS圏内に捉えます。
13周目、それまで3位だった Sven Zurner が、ダメージによるペースダウンで4位を走っていた Allert Vanderwal に一時ポジションを奪われますが、3位、4位そして5位が絡みあいながら、3ワイドでコーナーに入り、その際のマシンコントロールで3位を堅守しました。この時、その3位と2位の差は6秒まで広がっていました。
最終14周目、2位を走る Brendon Leigh が1位 F. Donoso Delgado を猛PUSH、Sector2 DRS区間でスピードに載せライン勝負、直後のコーナーでハードブレーキ勝負と2つの勝負を仕掛けインをキープ、 F. Donoso Delgado をライン外へ追い出し、ショートカットペナルティまで取らせるクレバーなオーバーテイクを魅せ、そのままゴールへ。 Brendon Leigh がF1 ESPORTS Seriesの初代チャンピオンとなりました。
実車ではハイスピード、急加速、急制動、高ダウンフォースと高グリップにより肉体に高い負担が掛かるフォーミュラカーですが、eスポーツレースではそれらの負担は皆無となります。
実車の場合、下位カテゴリーでは若さのアドバンテージがありますが、上位カテゴリーとなると体力的に強化可能な20代後半から開花する選手が多く、多くの若いドライバーたちは花開くことなく消えていきます。
セミファイナルまで残った40人の中には肉体的な制限により実車の道に進むことが出来なかった選手も含まれていますが、現在も実車にチャレンジしている選手たちとイコールコンディションで競い合いました。
本大会には、競技に使用されたゲームソフト『F1 2017』 が配信されたすべてのプラットフォームを通じて参加可能で、世界中からグランドファイナリストが集いました。
ファイナリスト達は、提供された公式ウェア、ヘッドフォン、シューを纏い整然と並ぶ公式シートに収まり、非常にクリアなレースが行われ、直前に行われた実車のドライバー達も観戦し花を添えました。
その内容は、実際のカメラポジションを多用し、テレビと同じ視点でレースが実況され、実車では表示されない燃料調整、前後バランス、デファインシャルといった操作や、タイヤやサスペンション、各パーツの状況が分かり分かる人ほどより楽しめる奥深さと、誰が一番速く走れるのか?という単純な目標が分かりやすく観戦することができました。
車の差がないのはつまらないという声もありますが、20台のF1カーがほぼ同じペースでメカトラブルなく展開するレースは、実際には存在しない楽しみに溢れていました。そこにはFIAという実車の競技団体がこのF1 ESPORTS Seriesに深く関与し、実車での舞台へ立てない才能を持つものを引っ張るという強い意思を感じました。
ハイライトは下記公式サイトから、そしてレース3の模様はフルでFacebookの動画ページから確認できます。
その白熱した戦いを是非ご覧になってみみてください。
レース アーカイブ
レース1 – サーキット・ジル・ビルヌーブ
レース2 – サーキット・ド・スパ-フランコルシャン
レース3 – ヤス・マリーナ・サーキット
日本のゲーミングチームはレースゲーにもっと目を向けるべきだと思う。
レースゲーのタイムアタックのランキング見ても日本人は実力持ってるのがわかる。
このシリーズのルールを隅から隅まで目を通しましたが、オンラインのオープン予選を含めて、タイムアタックの一発的な強さではなく、総合的なレース強さが求められてました。
セミファイナルの40名はプレイシート社の「プレイシートF1ゲームシート」に収まって競っており、25%の周回でGが掛からないとはいえその体勢も含めて、かなりの体力を要します。
瞬間的な刹那の速さもゲームとしてもちろん魅力ですが、レースとして求められるのはやはり体力を含めた総合的な速さ、そして抜き方を考えるレースマネージメントを1人で行う強さが求められているのではないかなと思います。
GTSports アカデミーからヨーロッパでは実車ドライバーが生まれましたが、国内のそれからはゲーム内のタイムアタックでは振るわなかったものの、体力と実車でのコントロールを評価されたプレイヤーが確かその時は選ばれたと、おぼろげながら記憶しております。