ゲームおよびeスポーツの業界5団体が、連名にてeスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みを開始したことを発表しました。
公式発表によると、下記5団体は日本におけるeスポーツの普及、発展とeスポーツ産業の振興を目標として、eスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みを開始します。
取り組みに参加する団体
株式会社コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長の襟川恵子氏が会長を務める「ゲーム競技化推進機構」という団体も存在しているそうですが、今回の発表にこちらは含まれていませんでした。
新団体設立後は、プロライセンスの発行、eスポーツ選手が日本及び世界で活躍できる環境の整備、地位向上を目指す活動などを行なっていくとしています。現在、世界的にみてもプロゲーマーのライセンスを発行しているのは韓国くらいです。
「プロゲーマー」の定義は「スポンサーがついていたら」「給料をもらっていたら」「賞金を獲得していたら」など人によって曖昧なのが現状ですが、統一団体がライセンスを発行するとなるとここがわかりやすくなりそうです。
現在、海外のプロチームと契約してプロゲーマーとして活動していたり、プロゲーマーとしての活動や存在意義を確立している方々がいますが、団体に加盟しなかった場合にはプロゲーマーと名乗れなくなったり、統一団体が公認する大会等に出場出来ないのかなどは気になるところです。
新団体設立の目的は先のように説明されていますが、「オリンピック」への選手派遣を実現するために統合団体を立てる必要があるというのが、新統合団体設立のもう1つの理由といえるでしょう。
「eスポーツ」は2022年の「アジア競技大会」で採用された他、2024年にフランスで開催される「オリンピック」でも競技化の可能性が報じられています。
日本の国内eスポーツ団体として最も古い歴史を持つ「日本eスポーツ協会」は、かねてより将来的なアジア競技大会やオリンピックへの日本選手派遣を目指した活動を行なっています。これを実現するには、「日本オリンピック委員会(JOC)」の加盟が必須となり、少なくとも下記の条件を満たす必要があると説明されています。
JOC加盟条件
「2」と「3」については条件を満たすと取れる実績がありますが、[1]が実現せず上記の通り「eスポーツ」の国内業界団体は複数が乱立してそれぞれ独自の活動を行なっている他、これまで統合の交渉が折り合わない状況で「1」が課題となっていました。
今回、このような状況を打破するべく「CESA」と「JOGA」がeスポーツ3団体を取りまとめる形で統合団体を新設していくことになったと思われます。2020年には東京オリンピックが開催されることから、団体としてはeスポーツ普及のチャンスと捉えているということもあるでしょう。
以下は個人的な余談に近い内容となりますが、昨今「eスポーツ」に関連するメディア掲載記事についてまわるのが先の「オリンピック出場」と日本の法律と関連してeスポーツ大会で「高額な賞金提供が出来ない」という問題です。
日本でeスポーツが普及するためには、オリンピック出場の実現や、高額賞金の提供が可能となることが必要、というもので、それは確かにそうなのでしょうが、eスポーツファン・ゲーマーとしての自分からすると違和感を感じることがあるというのが正直なところ。
オリンピックに採用されるのは現在のeスポーツ人気を作っているタイトルとは別ものに?
オリンピックは暴力的な表現を含むゲームをeスポーツ競技に採用しない見込みと報じられており、『Counter-Strike: Global Offensive』『Dota 2』『League of Legends』といった現在eスポーツファンを熱狂させているタイトルは採用されず、サッカー等の既存スポーツを題材にしたゲームを使用しeスポーツとして実施することになるのではないかと思われます。こうなった場合、現在のファンが熱狂しているeスポーツとは別物なのではという思いがあります。
ゲーマーはオリンピックや高額賞金を目指して競技をしているのでしょうか?
また、いまeスポーツ(競技)としてゲームを真剣にプレーしている人達が目指しているのは「オリンピック」ではなく、『League of Legends』だったら年に1回の『World Championship』ですし、『Dota 2』だったら『The International』という公式の世界大会でしょう。
これらの大会は現在では億単位の高額賞金をかけて競われる大会ですが、元々どちらのゲームも最初は賞金すらない状況で、ファン達が独自に大会やイベントを開くなどしてその規模を徐々に拡大しながら継続し続けているからこそ、eスポーツとして展開することが出来る巨大なファン・競技のコミュニティが形成され現在の高額賞金につながっています。
日本国内でも高額な賞金のeスポーツ大会が無いわけではなく、賞金総額5,000万円の「モンスターストライク」大会が2016年、2017年と開催されました。しかし、その結果「モンスターストライク」がeスポーツタイトルとして普及しているかと言われるとそうではないのではないでしょうか。
先月開催された『League of Legends』の日本王者決定戦および世界大会予選となる『LJL Summer 2017 Split Final』は、賞金額について一切アピールしていませんでしたが、決勝戦の会場観戦が有料ながらも幕張イベントホールを4,000人近いファンが埋め尽くしました。これは先の通り、『League of Legends』大会が日本国内で小さな会場からスタートし毎年継続しながらファンを獲得してきた結果で「高額賞金」や「オリンピック出場」がeスポーツの普及と必ずしも関係しない事例と言えます。
2017年8月に開催された『LJL 2017 Summer Split Final』
オリンピックや高額賞金はもちろん今後の普及に向けて大切なことに間違いはありませんが、eスポーツが熱狂的な展開を見せるのは、真剣にプレーするゲーマーとそれを応援するファンがいてこそです。
新たな統合業界団体には、コミュニティ出身でゲーマーやファンの気持ちを理解出来る方も何らかの形でぜひ登用していただきたいと思います。