日本のゲーミング界に翼を授けるゲームトーナメント『Red Bull 5G 2016 Finals』が12月18日(日)に品川プリンスホテル Club eXで開催されました。
『Red Bull 5G』は「5ジャンルから選出された5ゲーム」で競いあうゲームトーナメントで、予選を勝ち抜いたゲームプレーヤーたちが東西チームに分かれて激突しました。
大会は2012年にスタートし、2012・2013年は「東」チーム、2014・2015年は「西」チームが優勝しており、記念すべき「5」回目の大会でついに東西どちらが勝ち越すかが決定することになります。
『Red Bull 5G』は2014年から対戦ゲームの順番を「敗者側チームが選択する」という一般的なゲーム大会とは異なる独自ルールを採用しています。
この方式には、「勝利するためにどのゲームを選択するか」という戦略性や、誰も予想することが出来ないドラマチックな展開を演出するメリットがあります。運営チームとしては決まった順序での準備が出来ないため、セッティングに時間がかかれば選手や観客を待たせてしまうというデメリットがあります。
『Red Bull 5G』としては新たなチャレンジをすることをテーマの1つとして運営されていることに加えて、前者のメリットを選択してこの方式を採用しているということになるでしょう。
昨年の優勝は「西」チームだったため、初戦は「東」チームがゲームの選択権を保有。「東」のキャプテン やまどぅー選手は、自らが代表を務める「RACING」部門の選択を声高らかに宣言しました。
「PROJECT CARS PERFECT EDITION」では対戦コースを「スパ・フランコンシャル」、車種を「Toyota TS040 Hybrid LMP 1」として各チーム2名ずつ計4名が一斉に走行。4周してチームとしての合計タイムで勝敗が決定されます。
レースの重要なカギとなるスターティンググリッドのポジションは、事前に行なわれた予選レースのタイムアタックの順序で決定。
この結果により、レースは「東」チームが前方を走り「西」チームが後方から追いかける展開。予選タイム1位で2014年「RACING」部門のファイナリスト ほんだ選手が本レースでもトップを独走。続いて 2012・2013年の「RACING」ファイナリストで現在は「Team GRAPHT」にサポートを受けながら活動する やまどぅー選手が激走を見せる ほんだ選手の後ろを安定した走りで追い開けタイムを伸ばしていきました。
「西」チームは みとすぱ選手と2013、2014年の「RACING」ファイナリストで2014年は圧勝をみせた ねぎ選手が食らいつきながら追い上げますが、ミスで顔をしかめるようなシーンもありタイムを伸ばすことが出来ませんでした。
結果は「東」チームが「16:00.581」、「西」チームが「16:41.437」となり「東」チームの圧勝となりました。
「RACING」配信アーカイブ
2試合目は「西」チームがeスポーツタイトルとしても注目を集める「FREE」部門の「ロケットリーグ」を選択。わかりやすく説明するとラジコンカーを操作して行なう3vs3形式のサッカーゲームで、人間とは異なるスピーディーさ、ハイジャンプからの空中戦など迫力のゲーム展開が魅力です。
ステージは「DFHスタジアムを」使用し、1試合5分、2試合を先取したチームが優勝となります。
「東」チーム: Yuhi、 Shinozaki Akira、 dore52x
試合はお互いに点を取り合うド派手な展開。会場はハイボールが上がる度に歓声があがり、ゴールが決まればお祭り状態となっていました。
「東」の Yuhi選手は事前のインタビューでも話していたとおり、ゴールが決まる度に派手なポーズやハイタッチでチームメイトを鼓舞。 Shinozaki Akira 選手や dore52x 選手も次々にゴールへとボールを叩き込みました。
「西」チームも負けてはおらず みくみく選手がゴールを量産。 kh、 ねもと選手はテクニックを駆使してルーズボールをキープし、チームにチャンスを作ったりシュートを決めたりとまさにチーム一体のプレーを見せます。
1試合目は「1-2」で「東」、2試合目は「3-1」で「西」、そして運命の3試合目は「3-3」のままタイムアップとなり、先に点を取った方が価値となる延長戦へ。
一体どうなるのかと思った刹那、キックオフ後にボールをキープした「東」の Yuhi選手がゴールにボールを叩き込み、わずか数秒での決着となりました。
「ロケットリーグ」配信アーカイブ
「東」チームが優勝への王手をかけた3試合目に「西」チームが望みをかけて選択したのは「PUZZLE」部門の「ぷよぷよテトリス」。
1チームは「ぷよぷよ」と「テトリス」の選手2名で構成されており、試合では「VSルール」にて4人が同時に対戦を行ないます。連鎖やまとめ消しを行う事で、相手チームに妨害のブロックやぷよを送りこむことが可能。1試合は3本先取で、いち早く相手チームの画面を埋め付くし2試合を先取した方が勝利となります。
「西」チームの くまちょむ選手は2012・2013年の「PUZZLE」ファイナリストで、圧倒的な力を見せつ優勝した「ぷよぷよ」のレジェンド。チームメイトの HBM選手も2014年のファイナリストで、圧倒的な実力をもつ「テトリス」プレーヤーです。
対する「東」チームは2015年のファイナリストで自らを「神」と自称するほど実力に自信を持つ あめみやたいよう選手と、パズルゲームの実力者 TOM選手のコンビ。
事前のインタビューで「東」チームは「100%勝てる」と強気のコメントをしていましたが、ゲームはまさにその通りの展開で、「西」チームの画面はあっという間に妨害ブロックで埋め尽くされ自分のプレーをさせてもらえず。結果は1試合目「3-0」2試合目「3-1」と圧勝の形で「東」チームが勝利。この時点で「東」チームの優勝が決定しました。
「ぷよぷよテトリス」配信アーカイブ
「東」チームの総合優勝は決定しましたが、以降は各部門ではどちらが王者かを決定していく対決となります。
ゴンタ選手は前半を61%という高いボール支配率でゲームをコントロールし、 からあげ選手にシュートを打たせないゲーム運び。先制点も獲得し上々の展開です。
後半もドリブルで3人抜きしながらゴールエリアに入り込み、角度のないところからループシュートを叩き込むスーパープレーで追加点を獲得。
2-0で ゴンタ選手が勝利となり、「東」チームは完全優勝に王手をかけました。
ゴンタ選手はあまり感情を表に出さず、優勝しても冷静沈着という様子。
今回の勝利の副賞として、今後開催される「ウイニングイレブン2017」の公式eスポーツトーナメント『PES League 2017』日本代表決定戦への招待出場権を獲得しています。
「ウイニングイレブン2017」配信アーカイブ
「東」チームの完全優勝がかかった5試合目は「ストリートファイターV」での対戦。
「東」の代表は ウメハラ選手、 ボンちゃんで、共にレッドブルアスリートかつ世界トップクラスのプロ格闘ゲーマー。『Red Bull 5G』にプロゲーマーが出場するのは今回が初めてとなります(※これまでもルール上制限されていたわけではありません)。
プロが代表を務める「東」の勝利が期待されるところですが、スポンサーであるレッドブルの大会、プロゲーマーなのだから勝って当たり前、プロが完全優勝の足を引っ張るわけにはいかない、など様々なプレッシャーが有ったのでは無いと思います。
「西」チームの ぷげら選手、 ガチくん選手はプロゲーマーではありませんが、西日本エリアでは有名なトップ選手達です。
ルールは2on2形式で、入れ替わりながら最大5試合を行ない3試合に勝利した方が勝利。
連続で戦えるのは2試合までで、以降はかならず入れ替わる必要があるため対戦相手にどちらを当てていくかという戦略性が問われます。
1試合目は ウメハラ選手(リュウ)が ぷげら選手(キャミー)の組み合わせとなり、 ウメハラ選手が安定したプレーで勝利。
2試合目は両チームともに入れ替えを行ない、 ボンちゃん選手(ナッシュ)と ガチくん選手(ラシード)で対戦。 ガチくん選手は止まらない連続攻撃と安定したガードでつけいるスキを見せず ボンちゃん選手を撃破。3試合目に登場した ウメハラ選手も寄せつけず獲得試合数2-1で勝利に王手。
レギュレーションで3試合連続は出場出来ないため、「西」は ぷげら選手が登場。しかも、使うのは持ちキャラでは無いマイクバイソン。「東」チームは ボンちゃんに交代となり、 ぷげら選手の秘密兵器バイソンにしっかりと対処することでこのゲームを制します。これで2-2となり決着は5試合目に。
優勝を決定する試合を託す選手として「西」が選んだのは好調の ガチくん選手。「東」はチーム内での話し合いが行なわれ ボンちゃん選手が続投。 ボンちゃん選手は1本を先取され、さらに2本目では一撃食らえば終わりという状況から大逆転を見せるなど、プロゲーマーとしてのキャリアや精神力の強さをみせつけ不利な状況から見事に勝利。
プレッシャーと戦いながら勝ちを狙う [日本] ボンちゃん選手
これにより、全ジャンルで「東」チームが勝利となりパーフェクトでの完全総合優勝が決定しました。
「ストリートファイターV」配信アーカイブ
イベントでは、大会以外にもアスリートやDJによるパフォーマンスが行なわれました。
こちらの様子は、下記の配信アーカイブから見ることができます。
フリースタイルフットボールユニットSkill Air : Hiroki Matsudaさん
フリースタイルフットボールユニットSkill Air : 徳田 耕太郎さん
フル配信アーカイブ・写真
2012年からスタートした『Red Bull 5G』は、「5」回目の節目を迎えた今回の『Red Bull 5G 2016 Finals』をもって、「シーズン1」終了という形で一区切りとなります。
『Red Bull 5G』は12月にファイナルを終えると、1月から次回大会に向けた1年がかりのプロジェクトがスタートするというタイトなスケジュールで5年間運営されてきました。
この結果、タイトルの選定や企画に使える時間が限られてしまっていたことなどもあり、さらにより良い『Red Bull 5G』を作り上げるために2017年大会は開催見合わせとなり、装いを新たにした『Red Bull 5G』を「シーズン2」として実施していく計画です。
プロジェクトアドバイザーを務める松井 悠氏は「今後行なうイベントは、デベロッパー、オーディエンス、コミュニティなどが一体となって作り上げていくものにしていきたい」とコメントしていました。
配信アーカイブ
第1回の『Red Bull 5G』は渋谷のホテル街にあるクラブで行なわれました。会場に向かいながら「こんなところでゲームのイベントやるの…?」と思ったものですが、5年経った今回は品川の一等地にある一流ホテルの関連施設が会場となり、最初と同じような感想を持ちながら会場入りしたのが個人的には印象的でした。
『Red Bull 5G』の開催によって、DJの採用など『Red Bull 5G』の演出を参考としたであろう大会が増えたり、競技に選ばれた各ゲームのコミュニティが発展を遂げたり、ファイナリストとして出場していた選手が大会の運営に回る人が出てきたりと、この5年でさまざまな形で「日本のゲーミング界に翼を授ける」が実現してきたのではないかと思います。
個人的にも、公式レポートを見て「ゲーマーを写真でこんなに格好良く見せる事が出来るのか」と衝撃を受け、自分が大会やイベントの写真を撮ることにおいて大きな影響を与えられました。
『Red Bull 5G』は終了するわけではないですし、『Red Bull』は今後も様々なゲームイベントを展開していく予定です。
それぞれが授けられた翼を使って何をしていくかを考えながら活動していくことで、ゲームコミュニティがより良いものになり、さまざまな展開に繋がっていくことに期待したいと思います。