ゲーミングデバイスメーカー『ZOWIE GEAR』の CEO Vincent Tang(ヴィンセント=タン)氏が中国のゲーム情報サイト『PCgames』のインタビューにてZOWIE GEARの開発理念を分かりやすく説明しています。
かなり興味深い内容となっているので、是非ともご覧下さい。
尚、翻訳は日本代理店のマスタードシード株式会社に提供していただきました。
PCGames: 最近、ZOWIE GEAR 関連のニュースが増えてきましたね。特に、プロゲーマー Abdisamad “SpawN” Mohamed ・ Emil “HeatoN” Christensen 両氏が ZOWIE GEAR に加わったことについてのニュースが。SpawN パッド(マウスパッド TF シリーズ)も発売開始となりました(日本での発売予定日は 10/16)。しかし、そもそも、あなたが ZOWIE GEAR の CEO に就任したのはいつ頃ですか?
Vincent CEO: もともと私は ZOWIE の製品開発責任者だったのですが、(アンディにその責を譲り)今年の 5 月に ZOWIE GEAR の CEO に就任しました。
PCGames: ZOWIE GEAR の開発理念と、開発の重点は何でしょう?
Vincent CEO: ZOWIE GEAR は製品の品質に関して、完璧であることを追求しています。製品の品質というものは、私に取って常に一番大事なことです。ZOWIE GEAR は私の専門分野である eスポーツで広く使われる製品からビジネスを開始し、その後徐々にプロのゲーマーを対象とした製品にフォーカスしていきます。我々は、ゲーミング団体それぞれの要求仕様に合わせた特注製品の開発を始めたところです。個々の開発計画は、異なる要求仕様を満たす eスポーツ用品を開発しています。単一の製品で全ての市場のニーズに対応することはできないからです。
PCGames: SpawN パッドも同じように、高い品質基準に基づいて作られたのですか?
Vincent CEO: そうです。SpawN パッドの開発にあたっては、様々な意見が取り入れられました。
現在市場にあるゲーミングデバイスには、改善すべき明らかな問題点があるにも関わらず、(それがなかなか改善されないので)多くのゲーマーはそれを使わざるを得ません。他に選択肢がないから、やむなく既存の商品を選んでいるのです。私たちは、そういった問題点を解消する方法を模索してきました。
例を挙げましょう。これは企業秘密でして、話すのは初めてですよ。実は、SpawN パッドの表面の下には、もう 1 つの布の層があります。この層はゴムで接着されていますが、ゲーマーがマウスパッドを使う時には見えません。布を挟み込んだのは、サーフェイス(マウスパッドの表面)を最大限滑らかにしようという目的があるからです。3 層構造は必要ないと思われるでしょうが、マウスの滑りに問題が生じる恐れがあるという考えがあってこそ、細かい改良を行っているわけです。
プレスリリース上でこの詳細を明らかにしなかったのは、実際に製品を使ってみて、正確で快適なマウス操作を確かめて欲しいからです。
PCGames: TF シリーズの開発にあたって、SpawN との間でのどのようなやりとりがあったか、教えてくれませんか?
Vincent CEO: SpawN は布系パッドを嫌って、いつもハードプラスチック系パッドを使っていたので、布系パッドの開発に協力してもらうのは大変でした。SpawN は表面コーティングされたマウスパッドも使わない、というのも彼は、コーティングによって表面にしわが生じることや、パッドとしての使用限界が短いことを指摘しているからです。彼が布系パッドをメインに使うなんてことは、今までありえないことでした。
ともあれ、開発チームのメンバーとなった SpawN が、試作中の TF シリーズをテストさせたところ、最初の一言は「なんだ?(この滑らかな動きは?!) 何かコーティングされてるのか?」『何もコーティングしてないよ』。SpawN からのフィードバックを反映するべく、生地を織る工程での仕様変更を経て、製品が完成するに至りました。その後、SpawN は自ら友人たちを集めて TF シリーズをテストさせ、フィードバックをまとめ上げてくれましたよ。その友人たちが誰であるかは公表できませんが、eスポーツ界の有名人たちであるということは言っておきましょう。SpawN が集めたフィードバックは、どれも TF シリーズに対して肯定的なものでした。どのテスターにも気に入ってもらえたようです。
PCGames: 皆が興味津々なのですが、伝説的なプレイヤーである SpawN と HeatoN が ZOWIE GEAR に加わるきっかけは何だったのでしょう?
Vincent CEO: それは私ではなく、2 人に聞いてもらった方が良いでしょうね。ただ、2 人と話していて、私はプロ仕様の CoutnerStrike 向けゲーミングデバイスを開発しようという、彼らの純粋な情熱を感じます。ZOWIE GEAR に加わりたいという 2 人の意思に、私は驚きました。一緒に仕事をすることができて嬉しい。
PCGames: SpawN や HeatoN と仕事して、何か変わったと感じましたか?
Vincent CEO: 率直に言って、何かしらの分野で成功を収めた人たちは、共通するところがあるのですね。私は、HeatoN と SpawN が eスポーツ業界で成功した理由は、集中力と、仕事に対するリスペクトにあると思っています。彼らの個人的な趣味分野は違いますが、仕事に対する態度は同じように真剣そのものです。2 人は共に高いモチベーションを維持し、細部に渡って素晴らしい仕事を成し遂げます。これこそ、ZOWIE GEAR がキャッチコピーとして掲げる『Strive for Perfection(パーフェクトを目指してがんばろう)』です。私たちが共同して良い仕事を成し遂げることができる理由の一つです。
PCGames: 凄いですね。その ZOWIE GEAR の製品は、どれも今までなかったタイプのものばかりです。そのようなインスピレーションはどこから来るのですか?
Vincent CEO: インスピレーションというのは不思議なもので、私たちの場合は非常にシンプル、顧客の声に耳を傾けることから来ています。私はまた、eスポーツに詳しい従業員にも尋ねたりします。eスポーツを知らない人には、eスポーツ業界にとって素晴らしい製品は開発できませんし、ゲーミングデバイスのマーケティングも、販売も満足に行えません。超一流のプロゲーマーになる必要はありませんが、eスポーツを知ることなしに、市場のニーズを把握することは無理でしょうし、SpawN や HeatoN、その他の協力者たちとコミュニケーションを十分に図ることも難しいでしょう。(名ばかりのゲーミングデバイスも見かけますが)eスポーツの現実を全く知ることなしに、真に「ゲーミング」という名前を付けるに値する商品、お金を払っていただくに値する製品を開発することは不可能です。
PCGames: あなた自身は eスポーツタイトルをプレイしますか?
Vincent CEO: 私は余った時間で Counter Strike をプレイしています。HeatoN が台湾に来た時、私と彼と、UMX(台湾の eスポーツチーム Ultimax Gaming)のメンバーと一緒にプレイしましたよ。オフラインでプレイしていると、使用するデバイスに色々問題点が見つかりますね。私たちはそういう時、何かを学んだり、製品改良の余地を見つけたりします。私は、完璧なゲーミングデバイスなんて存在しないが、もし完璧な製品があるとしたら、私たちが製品開発を行う必要はないはず。でも、それってバカげた話でしょう? (現在市場にあるゲーミングデバイスに不満があるからこそ、ゲーマーは次々出てくる新しいゲーミングデバイスの発売を心待ちにしているわけで。)
PCGames: あなたは eスポーツの試合を観戦しますか?
Vincent CEO: もちろん。私は CCSL(中国 Counter Strike リーグ)に注目しています。試行錯誤しながらのテスト運営です。私は個人的に、このトーナメントの理念に賛成しており、トーナメントの運営をサポートしています。だから当然、試合結果にも関心があります。
中国というのは巨大で、そして独特なマーケットです。中国の CS 界は盛り下がっていますが、その理由の 1 つは、あるチームの優勝が最初から決まってるような、チーム間の実力不均衡にあると思います。
WarCraft3 が中国で盛り上がっている理由は、選手間の実力のバランスにあると思います。例えば Sky 選手がチャンピオンとして安泰ではいられない(他にも優勝候補の選手がいるから)、そういうことが中国で WarCraft を人気タイトルにしているのです。CS でも、wNv や Tyloo が良いライバル関係になっていますし、Jungle も復帰してきました。上海ではより活動的な CS チームが設立されました。こういった要素が、中国の CS を面白くしつつあります。CSSL が継続して開催され LAN 大会も実施されるようになれば、中国でも CS は盛り上がっていくんじゃないかと。
PCGames: SpawN パッドと同じく、ZOWIE GEAR は最近、ヘッドセット(Hammer)も発売しましたが、このヘッドセットの特徴は?
Vincent CEO: 一番のセールスポイントは、音の素晴らしさです。今までは、ゲーム中のシチュエーション・戦況を細かく把握できるようにするためサウンドチューニングに妥協していたので、そのサウンドは聴いていて心地良いものではありませんでした。我々はこの部分を改良するとともに、2 種類のイヤークッションを付け替え可能にしました。異なるタイプのイヤークッションを使い分けることで、ゲームだけでなく、音楽や映画の鑑賞にも対応できるようにしています。イヤークッションを交換式にすることで、ゲーム、音楽鑑賞など使用目的を考えずとも、ユーザーがヘッドセットを購入することができるようになります。
加えて、多くのゲーマーが感じている不満として、ゲーミングヘッドセットを長時間使用した時に不快感を覚えるという装着感の問題があります。(耳が切り取られるかのような痛みを覚える。ハウジングを耳たぶに引っ掛けて固定するタイプは特に。)。Hammer はこの問題を解決し、長期に渡って使用しても不快感を覚えないように設計されています。私の見解として、この装着感の良さはユーザーにとって非常に重要です。
最後に、我々は製品開発の経験から、最新設計のヘッドセットであろうとも、いとも簡単に壊れてしまうものであることを学びました。メーカーがどんなにアフターサービスの責任を負うにせよ、しょっちゅう壊れる製品を作っていては、メーカー自身にとっても良くないことだし、ユーザーにも迷惑が掛かります。(だから、Hammer のデザインは古臭くてシンプルなものになっているのです)
PCGames: マウスやキーボードの発売予定はありますか? もし予定があるなら、ZOWIE GEAR ならでは創造的な製品を期待してしまいます。
Vincent CEO: 開発計画は進行中ですよ。ただ、創造的なものを期待されても、がっかりしてしまうでしょう。ZOWIE GEAR は eスポーツ用品の開発にこだわっていますから。eスポーツ選手はゲーミングデバイスに対して、eスポーツ用品としての信頼性を求めています。eスポーツ用品に多くの機能を盛り込むことは不要ですし、むしろ、試合中に誤操作を引き起こしてしまう恐れがあるでしょう。
ZOWIE GEAR の製造するマウスは、可能な限りシンプルなものになります。PC に接続したら、選手はセッティングなしで即座にプレイを始めることができます。ZOWIE GEAR の目標は、正確な操作ができ、快適な握り心地で、操作ミスを引き起こしにくいマウスを開発することです。いくつかのメーカーが、新しいテクノロジと多くの機能を盛り込んだマウスセンサーを売り込みに来ましたが、信頼性が証明されていない新技術を ZOWIE GEAR は採用しません。
eスポーツはあくまで競技なので、プロ仕様の製品が求められるのです。オフィスの PC でマウスの動作がおかしくなったくらいで何か損害が発生するわけではないですが、試合中にそれが起こった場合、選手として結果を出すのは難しくなります。eスポーツで使われるマウスは、会社やネットゲームで使うものとは違うのです。パーティに行くときは礼服と革靴を着ていくべきだし、バスケットボールならバスケットシューズと動きやすいウェアを身に着けますよね? 高価な革靴を履いてバスケットボールをしてたら、怪我したり、あらぬ誤解を受ける可能性が高くなります。
eスポーツがスポーツであるなら、eスポーツは人間本位のものであるはずです。ZOWIE GEAR は eスポーツ用品のメーカーとして、選手が本来の実力を発揮して素晴らしい試合を見せれくれる、その手助けする道具を提供するに過ぎないのです。我々はなにも正しいことを逸脱する必要はないし、オート・ヘッドショット機能の付いたマウスを作るなんて、チートですよ。
PCGames: 良く分かります。大手ゲーミングデバイスメーカーとは考え方がだいぶ違いますね。あなたのその考え方が、ZOWIE GEARのビジネスの拡大を制限することはないのでしょうか?
Vincent CEO: ZOWIE GEAR はプロゲーマーを対象にした製品を製造しています。(プロゲーマーの数は限られていますから、当然ですが)この分野の市場は規模が限られてきます。ですから、ビジネスを大きくしていくためには、他にも存在する専門分野の可能性を調査する必要がありますが、当面は、eスポーツ分野で優れた仕事をしていくことの方が ZOWIE GEARにとって重要です。
PCGames: ライバル社に対するあなたの見方は?
Vincent CEO: 私の同僚と、そして私自身は、他社が優れた製品を作り出そうとすることに待ったをかけることはできないのだ、という考えを共有し、強調しました。他社が優れた製品を作らなければ、我々の製品も優れたものにはならないでしょう(なぜなら、そこに競争がないからです)。そうして生まれた粗悪な製品は、早かれ遅かれ市場から淘汰されるでしょう。だがしかし、できれば、自分のベストを出し切って製品を作り出すことが一番重要です。他社に追随するのではなく、自ら進歩するべきなのです。
PCGames: CO/GENES(eスポーツゲーマー向けバッグのブランド)も展開していますよね。ブランドを立ち上げたのはどうしてです?
Vincent CEO: CO/GENES は eスポーツゲーマーに対して、特殊な機能、カッコいいデザイン、eスポーツに適した付属品、職人芸が生み出す高品質といった、カバン選びの新たな選択肢を提案したいのです。CO/GENES のバッグを良く見てくれた人はみんな、値段は高いけど品質も高いと言ってくれている。CO/GENES の販売規模は ZOWIE GEAR に比べて今は小さいですが、私は CO/GENES をとても気に入ってくれるユーザーもいると確信しています。既にヨーロッパで非常に高い評価を得ています。
PCGames: インタビューの時間を作っていただいて、ありがとうございました。ZOWIE GEAR からプロゲーマー仕様のゲーミングデバイスが次々発表されるのを楽しみにしています。
Vincent CEO: ありがとう。PCgames は、中国 eスポーツコミュニティの活動基盤として多大な貢献をしてくれています。1 人の eスポーツファンとして、PCgames にお礼を言わなければいけませんね。
インタビューにより、『ZOWIE GEAR』のコンセプトがよく理解できたのではないでしょうか?
インタビュー中にもありましたが、SpawN選手が開発に参加したTFシリーズは10月16日より国内販売開始となります。
また、ヘッドセット『ZOWIE GEAR Hammer Headset』はすでに発売中となっています。
第一位
我期待"ZOWIE GEAR"
ああ、Zowieもこの人絡みだったんですね。
知りませんでした。
某S社みたいに口だけにならないことを切実に願う。
このインタビュー内容を理解する上で、彼がe-Sportsという競争の激しい業界に関わって生きてきて、LANで行われる試合と、インターネット経由のオンライン試合を明確に区別しているであろうことは、予め知っておくべきことでしょうか。
氏と接したことのある人は分かるでしょうが、LANという、通信距離が無視できるほど小さくて、選手本来の実力を発揮できる環境で行われる試合は、インターネット経由の試合とは別格であるという考えが前提があると思われます。
日本のFPSゲーマー層が、実力・規模共に海外に敵わないのは、LANで試合をする機会を自分たちの力で作り上げる積極性が足りないせい、かも知れませんね。(現に、格ゲーの方は盛り上がってますから)